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2020年5月10日

「認可外保育園にも、保育料の日割り返還の仕組みを」。園と共倒れにならないために、保護者たちが動き始めた

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新型コロナウイルス感染拡大により、保育園への登園自粛が広がっている。政府は、市区町村からの登園自粛の要請があった場合は、保護者が登園日数分だけ保育料を負担し、それによる施設側の減収分は国と自治体が穴埋めする仕組みを整えている。ただ、その対象は認可施設のみ。認可外施設利用者の中には、登園していないのに保育料を支払い続けている人もいる。

福岡県福岡市や東京都練馬区などのように独自で、認可、認可外保育園ともに保育料を日割り返還できる仕組みをつくった自治体はある。ただ国としての施策はまだなく、地域によって差が出ているのが実態だ。

「認可外保育園も、保育料の日割り返還ができる仕組みがないと、保護者の家計も園の運営も、もたない」──4月中旬、認可外保育園を利用する保護者を中心に、インターネット上で署名活動が始まった。

5月4日、立憲民主党の枝野幸男代表と党の子ども・子育てプロジェクトチーム事務局長の早稲田夕季衆議院議員、山本正乃埼玉県議会議員が、署名活動メンバーたちと認可外保育園の運営者たちから、オンラインでヒアリングを行った。ヒアリングを通じて、現状をこのまま放っておけば、保護者も保育園も共倒れになり、子どもたちが行き場を失ってしまう危険性が見えてきた。

※写真は上段が左から清水さん、akokoさん、あいさん、中段左から早稲田衆院議員、山本県議、枝野代表、下段が細井さん

「無収入の中、2日登園のみで保育料6万円強の満額請求」。認可外保育園に預ける家庭の今

アパレルの仕事をしています。緊急事態宣言発令後は店舗が休業となり、月収はガクンと下がりました。夫も観光産業なので、正直いつクビを切られるかとヒヤヒヤしています。そうした中、認可外保育園では登園自粛しても保育料の返金がありません。月の保育料約66,000円のうち37,000円は、幼保無償化の補助がありますが、残りを払っています。

市に相談しても、国に問い合わせても、「認可外保育園の保育料は(園と保護者の民間契約なので)うちには関係ない」という対応でした。保育の規模を小さくするよう行政は認可外保育園にも要請を出しているのに、お金のことになるとそっぽを向くのが許せなくて。怒りがふつふつと沸いてきます。不安の中、毎日家で家事、育児をしていますが、正直、もう心に余裕がありません。

4歳の息子を認可外保育園に預けているakokoさん(仮名)は、「同じように苦しんでいる保護者は全国にたくさんいるはず」と考え、同じ保育園に通うママ友と、オンラインでの署名活動を始めた。2人の子どもを育てている、あいさん(仮名)も署名活動に加わったひとりだ。

4歳になる下の娘を、認可外保育園に預けています。4月は2日間しか登園していませんが、月の保育料約66,000円を払いました。我が家は幼保無償化の補助対象外なので、全額です。コロナの影響で夫の収入がほぼゼロになってしまいました。登園しないのに保育料を支払い続ける余裕はなく、退園も考えています。

でも待機児童がいるので、必要なときに入園できるとは限らないし、もし退園者が増えてしまったら、認可外保育園が倒産してしまうかもしれない。保育園数が足りていない中での認可外保育園の倒産は、子どもが行き場を失うことにもつながります。

それに、せっかく登園自粛していた人でも、保育料が返還されないから家計が苦しくなるだろうと、また登園させて仕事に行き始める人もいます。 5月4日時点(※)での署名は264筆と決して多いとは言えませんが、それは当事者以外には知られにくい問題だからです。

※5月8日時点では約520筆

また2人は、「認可外保育園に通っているのは裕福な家庭と思われがちですが、応募が集中する認可に入れなかったために、所得が高くない家庭が通っているケースもあります」と口をそろえる。認可外保育園で保育料の日割り返還がないことは、子育て世帯の生活の危機に直結してしまう。

登園自粛家庭からの保育料がなければ、収入は月7割減。認可外保育園が、保護者も保育士も切り捨てずに事業継続する道は

通常時の園児数は18名ですが、可能な家庭には登園自粛をお願いし、現在登園しているのは5名のみです。認可と比べてあまりに高いと保護者の負担になってしまうので、保育料は経営努力で安くおさえてきました。運営資金のほとんどは保育料ですが、それも人件費でほぼなくなります。そんな中で、登園自粛の家庭に保育料を請求しない場合、運営資金は約7割減になってしまいます。

しかも登園する園児が減った分、保育士は休みにして、休業手当を払っています。でも、雇用調整助成金を申請できるのは、休業手当を支払った後です。さらに振り込まれるまでに、かなり時間がかかります。持続化給付金の申請準備もしていますが、こちらもすぐには振り込まれません。その間の資金繰りをどうすればいいのか。答えは出ていません。「福祉の維持」のため、国に緊急的に力を貸してしてほしいです。

埼玉県白岡市で認可外保育園を経営する細井藤夫さんは、現在の国の補助制度を使っても「回すキャッシュがない」と話す。神奈川県鎌倉市で認可外保育園(幼稚園類似施設)を運営する清水研さんは、4月8日から自主的に休園を決め、保育料を全額返金している。従来の保育制度の枠組みではなく、現在の多様な子育て支援の種類、保護者や子どもの実態を見て政策を考えてほしい、と訴える。 

当園はそもそも本業としての運営ではないので、何とか持ちこたえていますが、近隣の園はかなり厳しいと聞きます。

今、子育て支援は多様になっていますが、役人や一部の政治家の中には「幼稚園」と「保育園」の大きなくくりしかないように思います。「子育て支援」においては、子どもが通う園によって(保護者への)支援の内容に差がないようにしていただきたい。今回のように認可外保育園を使う保護者が困っている現実を見て、対応してほしいです。

保護者や保育士に負担を強いれば、経営は維持できるが、それは社会福祉の担い手としての矜持(きょうじ)が許さない。でも園が潰れてしまったら、子どもの行き場がなくなり、保護者は働けなくなってしまう。認可外保育園の運営者は、経営者としての立場と、社会福祉の担い手としての立場の間で葛藤しながら、コロナ危機をどう乗り越えるか頭を抱えている。


待機児童ゼロを「夢のまた夢」にしないために。国と自治体の両方から、問題解決を探る

枝野代表と早稲田衆院議員は、署名メンバーと認可外保育園運営者たちの話を受け、「国が取り組むべき問題」と応じた。

枝野代表:保育園では消毒液やマスクが足りないなど、保育料の日割り返還以外にも大変なことがたくさんあると思います。保護者に負担をかけないよう努力している認可外保育園ほど、行政からの支援が不十分なために、窮地に立たされています。そんな苦しい中で、声を聞かせていただきありがとうございます。

自治体と国の両面から、解決策を探りたいと思います。2020年度補正予算で計上された約1兆円の自治体向け臨時交付金を、保育料の日割り返還に充ててもらうことも方法のひとつです。1兆円という現在の額では全く足りない、とわれわれはこれまでも国会で主張してきましたが、引き続き増額を訴えていきます。同時に、縦割り行政、省庁の枠を超えてこの問題に取り組めるようにしていきたいです。

早稲田衆院議員:このままでは、待機児童ゼロなんて「夢のまた夢」になりかねません。政府に強く要望するために、署名活動など、みなさんの力をぜひ、貸してください。

「声を上げれば、届くんだ」。そう思ってもらえる政治を。

コロナ危機により、今までは政治に積極的には関わっていなかった学生や、認可外保育園に子どもを預ける保護者などが、オンラインで声を上げ、それが政治につながる動きが出てきている。

山本県議:Twitterでこの署名活動を知り、複雑な制度の中で保護者たちが苦労されていることが分かりました。akokoさんとあいさんが思い切って声を上げてくれて、感謝しています。わたしも子育てしながら仕事をしていたから、皆さんの気持ちがよく分かります。

わたしから県へ働きかけましたが、財源不足の自治体では限界があります。自治体への交付金を増額してもらうなど、党と一緒に動く必要があります。akokoさん、あいさんも一緒に頑張りましょうね。

akokoさん:同じ園のママ、パパたちに協力を呼びかけていますが、SOSを出すことに慣れていない人、「行動したところで何も変わらない」と横目で見ている人が多いんです。でも、不満は心にある。言えないだけなんですよね。 わたしは今まで政治に無関心でしたが、今回動いてみて、こうして枝野さんとも直接お話できて、声を上げれば意外と届くんだ、と思いました。これを励みにして、周囲のママ、パパたちに「声を拾ってくれる人はいるから、一緒に頑張ろう」ってまた呼びかけようと思います。

枝野代表:わたしたちはいつも、現場の声をどうやったら拾いきれるだろうと考えています。実は政治って近いんだ、と実感してもらえたなら嬉しいです。自治体だけ、国だけでは解決できないこともあります。子どもたちが健やかに育つ場を守るために、一緒に頑張っていきましょう。


枝野幸男 YUKIO EDANO(立憲民主党 代表)
ホームページ https://www.edano.gr.jp/
Twitter @edanoyukio0531

早稲田夕季 YUKI WASEDA(立憲民主党 衆議院議員)
ホームページ https://waseda-yuki.jp/
Twitter @waseda_yuki

山本正乃 MASANO YAMAMOTO(立憲民主党 埼玉県議会議員)
ホームページ https://www.y-masano.jp/
Twitter @MasanoYamamoto


<追記1>
このヒアリングを受けて、早稲田夕季衆院議員が5月11日に「認可外保育所等の登園自粛・臨時休園に伴う保育料減免への支援の必要性」について質問主意書で要望。
5月12日、認可施設だけでなく企業主導型保育所でも、臨時休園などによる保育料の減額分が助成対象となった。
https://www.kigyounaihoiku.jp/info/20200512-01


<追記2>
このヒアリングを受けて、早稲田夕季衆院議員が5月20日の衆議院内閣委員会で、「認可外保育所は休園や自粛をしても国からの支援がないため保育料の減免が受けられない」と指摘。衛藤晟一少子化対策大臣は「認可外保育所は園に対して(保育料減免分を)一律支給するのは難しいが、父母負担についてはきちんと対応したい」などと答弁した。
▼質疑の映像はこちらから
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=50198&media_type=

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