2020年5月12日
【衆院本会】地域共生社会の実現のための社会福祉法等改正案と立憲等提出の障がい福祉3法案が審議入り
衆院本会議で12日、政府提出の「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律案」と、関連法案として共同会派を組む立憲民主党、国民民主党、衆院会派「社会保障を立て直す国民会議」、社会民主党と日本共産党が8日提出した障がい福祉3法案(※)の趣旨説明と質疑が行われました(写真上は、野党提出障がい福祉3法案の趣旨説明をする早稲田議員)。
※野党提出の障がい福祉3法案は「介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案」「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の一部を改正する法津案」「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律案」
政府提出の「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律案」は、地域共生社会の実現を図るため、地域住民の複雑化・複合化した支援ニーズに対応する包括的な福祉サービス提供体制を整備する観点から、(1)市町村の包括的な支援体制の構築の支援、(2)地域の特性に応じた認知症施策や介護サービス提供体制の整備等の推進、(3)医療・介護のデータ基盤の整備の推進、(4)介護人材確保及び業務効率化の取組の強化、(5)社会福祉連携推進法人制度の創設――等の措置を講ずるものです。
障がい福祉3法案の趣旨説明には早稲田夕季議員が、3法案の答弁には池田真紀議員が登壇しました。
3法案の趣旨説明に立った早稲田議員は、介護・障がい福祉従事者人材確保法案について「団塊世代の全てが後期高齢者となる2025年を前に、高齢者、障がい者に対して、質の高いサービスの提供体制が求められているにもかかわらず、介護・障がい福祉の現場では人手不足が深刻化している」と指摘、著しく低い賃金水準が一番の原因だとして、既に提出済の処遇改善法案の内容をバージョンアップし再提出したと説明しました。
この法律案は、都道府県知事は、介護・障がい福祉従事者等の賃金を改善するための措置を講ずる事業者等の申請に基づき、助成金を支給することとしており、ケアマネや事務職の方を含め、介護・障がい福祉に従事する全ての方を対象に、平均して1人当たり月額1万円賃金を引き上げるべく、助成金の支給に要する費用は全額国の負担としています。また、ホームヘルパー等へのセクハラ・パワハラを防止するため、適切な就業環境の維持について国や事業者等に努力義務規定を設けることにしています。
また、食事加算等存続法案については、厚生労働省が来年4月の障がい福祉サービスの報酬改定に向け、食事加算と送迎加算の調査を実施し、この2つの加算の廃止・減額の方針を打ち出そうとしていることに障がい者やその家族、支援団体から不安の声が挙がっていることを受け、厳しい生活を強いられている障がい者の負担増となる食事加算等の廃止・減額を阻止するためと説明しました。
こちらは、食事提供体制加算等の廃止・減額を阻止するため、当分の間、食事提供体制加算等を廃止してはならないものとするとともに、送迎加算についても、サービス利用者に不利な内容の算定基準を定めてはならないこととしています。
さらに、重度訪問介護就労支援法案は、重度訪問介護サービスについて、かねてより通勤や就労中に利用できないことが問題となっており、障がい当事者や地方自治体から見直しが求められていることと、厚生労働省は、重度訪問介護利用者の就労を支援する事業主への助成金の拡充を決めたものの、重度訪問介護自体の改善には踏み込んでおらず、多様な働き方に対応できていないため、重度訪問介護を通勤や職場で利用できるようにする法案として提出をしたと説明しました。
こちらは、職場での介護及び通勤における移動中の介護を重度訪問介護の対象とするとともに、行動援護など重度訪問介護以外の職場及び通勤における支援の実施、また、障がい者等の通学における支援の拡充並びに重度の障がい者等を雇用する事業主に対する支援の拡充についての検討規定を設けることにしています。
そして、「これら障がい福祉関連3法案は、先ほど加藤厚生労働大臣から説明のあった『地域共生社会』の実現に資するだけでなく、安倍内閣が掲げる『一億総活躍社会』『介護離職ゼロ』の実現に向けての有効な対応策になり得るものと確信している」と語り、党派を超えてご賛同いただきたいと訴えました。
池田議員は、同じ会派の中島克仁議員が、「3法案は、介護・障がい福祉現場の深刻な実態に応えるものであり、また現場で懸命に働く方々、障がい当事者、支援団体からすくい上げた声を形にしたものと承知している」との認識の上で、(1)食事加算、送迎加算(2)重度訪問介護の支援拡大――について見解を求めたことに対して次のように答弁しました。
食事加算・送迎加算については、「今でも利用者の所得水準が改善されない中で、これらの加算が廃止されたら、食事がとれなくなるが7割以上、昼食をたべなくなるが5割以上という調査結果もある」「送迎加算も引下げにより、送迎サービスが縮小・廃止されることとなれば、そもそも通所の手段を失い通所は困難となることが懸念される」とした上で、法律案では、それぞれの加算について、「当分の間、障がい者等に不利な内容となる算定基準を定めることのないよう、法律上に規定を設けることとした」と説明しました。
重度訪問介護の支援拡大については、現行法において告示523号通知が「就労の壁」となっていると指摘。この通知には「外出(通勤、営業活動等の経済活動に係る外出、通年かつ長期にわたる外出および社会通念上適当でない外出)を除く」とあり、この通知自体の撤廃を求める声が今も引き続き多くあることから、(1)排せつや食事の介助は、あくまで日常生活の延長線上にある支援といえるため、個人の経済活動を公費で支援することにはならないこと(2)勤労は全ての国民に保障されている権利であり、常時介護を必要とする重度の障がい者であっても働くことのできる社会の実現を図るためには、支援の拡充により「就労の壁」を取り除いていくことが必要であること――を挙げました。さらに他の障がい福祉サービスにおいても職場での介助や通勤における移動中の介助、障がい児の通学に対する支援のあり方など、本法案の検討事項としているkとを紹介しました。
池田議員は、安倍総理が第200回臨時国会の所信表明演説で「障がいや難病のある方々が、個性を発揮し、生き生きと活躍できる時代をつくり上げる」と訴えたことを紹介し、3法案の採決に自民党が応じないとか、3法案に反対するとかはあり得ないと述べ、「この3法案が成立できれば、歴史的な一歩になる」と力を込めました。さらに、誰もが地域であたりまえに暮らし、あたりまえに学び、あたりまえに働くことができる「共生社会」の第一歩として、重度訪問介護支援拡大法案、食事加算及び送迎加算の維持法案、介護人材処遇改善法案の3法案の成立をお願いすると訴え、答弁を締めました。