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2020年5月22日

見切り発車では、責任ある政策実行はできない──。一律10万円給付実務を担う自治体現場の苦境

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政府が新型コロナウイルス感染拡大に対する経済対策の目玉として打ち出した「特別定額給付金」。当初は一律給付に前向きでなかった政府は、いったん閣議決定した補正予算案を国会審議の前に組み替えるという異例の対応で、国民一人あたり一律10万円を支給する現行制度に切り替えた。安倍首相は4月27日の衆院予算委員会で「5月中の支給を目標とする」などと発言。ただ、国会で同給付金の支給を含む補正予算が成立したのは4月30日だった。自治体の準備期間はきわめて短い。

こうした政治の混乱、場当たり的な対応のしわ寄せが、実際に給付業務にあたる全国の自治体にきている。2020年4月1日時点で16%しか普及していないマイナンバーカードを必要とするオンライン申請を取り入れた結果、カード取得や暗証番号の再設定などで窓口に人が集中。またオンライン申請情報と住民基本台帳データ(市町村が持っている住民情報)を1件ずつ職員が手作業で照合するなど、業務はなかなか円滑に進まない。

このような事態が起きた一因は、国が支給時期の目安となるスケジュールを示さず、実際の支給にあたる現場をかえりみない姿勢だ。第二次補正予算策定も含めた今後のコロナ対策にも、この姿勢は大きく影響しかねない。今後のコロナ対策を改善するため、立憲民主党の枝野幸男代表と岸真紀子参議院議員は5月18日、同給付金の支給業務について、自治体現場からオンラインでヒアリングを実施。浮き彫りになったのは、政府が準備不足のまま見切り発車したことで、効果的なコロナ対策ができない実態だ。

※写真は上段左側から政令指定都市の区役所職員Aさん、全日本自治団体労働組合の政策局長Bさん、福島県福島市の市役所職員Cさん、北海道空知管内の市役所職員Dさん、岸参議院議員、枝野代表、下段が政令指定都市の区役所職員Eさん

「休日返上、日をまたぐのは当たり前」。政府が給付目安を自治体に示さないため起きる過重労働

人口が少なく、高齢化率が40%近い自治体に勤める北海道空知管内の市役所職員Dさんによると、すでに郵送申請のための書類発送は行ったが、現在は非正規雇用含め職員総出で申請受付の対応中。現場は連日、深夜残業をしているという。

「とにかく一日でも早い申請書発送を目指したので、休日返上、日をまたぐのは当然という尋常ではないスケジュールでした。オンラインや郵送ではなく来庁して手続きする高齢者が多いと予想されたので、申請受付は感染防止のために市内で一番広い施設で行っています。事務手続き一つひとつは簡単なのですが、業務量は膨大です。そのために非正規職員を雇おうと思っても、そもそも人口が少なく応募がありません。

人手が足りないので、職員は同給付金関係の仕事が終わった夜遅くからやっと、自分の本来の担当の仕事をしています。職員のメンタルヘルスが心配です」

国で申請書の発送や給付の時期目安が決められていなかったことで、全国の自治体間でばらつきがあり、市民からの苦情が殺到しているという。

北海道空知管内の市役所職員Dさん
「早い時期に申請書を発送した自治体が報道されると、申請書が届いていない市民にとってみれば、自治体職員の頑張りが足りないんじゃないか、結局、公務員は給料が下がらないからだ、と考えてしまう。その結果、かなり辛辣な言葉で苦情の電話が多数ありました」

福島県福島市の市役所職員Cさん
「別の自治体が早めの手続きを開始すると、それに影響されて各自治体の『競争』が起きている、というのが福島県内の現状です」

オンライン申請が「本末転倒」と言われる理由

多くの報道が出ているように、同給付金で問題となっているのが、マイナンバーカードを活用したオンライン申請だ。自治体は国のシステムから転送されてくる申請情報を、住民基本台帳システムなどと手作業で照らし合わせ、重複申請や記入漏れなどをチェックしており、膨大な時間と手間がかかっている。迅速な給付をするためのオンライン申請が「本末転倒」と批判されているゆえんだ。

北海道空知管内の市役所職員Dさん
「住民基本台帳システムとの照合は、1件ずつ確認するので時間がかかります。しかもミスを防ぐため、2人がかり。午前中に申請が多いので、照合のためのアクセスが集中し、J-LIS(地方公共団体情報システム機構)という国の機関が運営するシステムがフリーズすることもありました」

福島県福島市の市役所職員Cさん
「重複申請などをまず全て画面でチェックすると、不備や間違いが1割ほどあります。そういう方には電話して、再申請や郵送申請への切り替えをしてもらわないといけません」

報道でオンライン申請が多く取り上げられているため、そもそもオンラインでしか申請できないと思っている市民もいるという。そういった人たちが申請方法の問い合わせや暗証番号の再発行などの目的で来庁し、人が建物内に集中してしまう。

福島県福島市の市役所職員Cさん
「オンライン申請に必要なマイナンバーカード発行には1カ月ほどかかるので、同給付金の給付を早く受けたいなら郵送申請の方が早いと市のホームページにもお知らせを出しているのですが、そもそもオンラインでしか申請できないと思っていて、カード発行のためにどうしても窓口に来てしまう方もいます」

全日本自治団体労働組合の政策局長Bさん
「郵送だけに絞っていたら、しなくて済んだような事務作業は結構あるのでは。しかも、今までさんざん『ステイホーム』と政府は呼びかけてきたのに、オンライン申請関係の来庁で、役所内に『三密』状態ができてしまう。これはおかしいのではないでしょうか」

オンライン申請については香川県高松市のように作業に支障が出るため中止を決めた自治体がある一方、茨城県つくば市は独自で国のデータと同市の住民記録を自動照合する仕組みを構築。自治体間の差が広がる懸念も出てきた。

ワンストップ対応ができない──。窓口業務の外部委託に限界

ある政令指定都市の区役所では、区民サービスの向上と効率的な業務運営を目指すとして、窓口業務を一部、民間業者に委託している。今回の同給付金の給付業務は本庁で行うが、質問や苦情は区役所窓口にも多く寄せられるという。

政令指定都市の区役所職員Eさん「職員ならば、担当窓口に関係ない質問にも答えられます。たとえば住民登録の窓口担当でも、国民健康保険など転出入届に関係すること、今回の特別定額給付金についても自分たちで勉強して、市民から手続きのついでに相談されても対応可能です。ただ委託業者だと、たとえば住民登録が担当窓口だった場合、手続き方法などの実務的な質問しか受けられません。住民登録の制度、成り立ちや現行制度の課題といった踏み込んだ質問には答えられないのです」

岸参院議員「住民にとって一番身近な窓口の業務で、ワンストップの対応ができないのが、委託の限界だと思います。自治体職員であれば、当該課に関わることにとどまらずにいろいろ教えてあげられるけれど、委託ではそれは業務範囲外になってしまう」

現在のような緊急時、国や自治体による支援制度が乱立して市民にとって分かりにくい中、対応にあたるのが業務内容の限定された委託民間業者では、満足のいく対応は難しい。中長期的には若手職員が市民のニーズを聞き取り、適切なサービスにつなげるトレーニングの機会も減っていく。「行政のプロ」が育ちにくい自治体は、緊急時対応でも弱くなってしまう。

国と地方の関係のひずみが、現場職員に負担を強いている

現場の職員からは、コロナ対策で今後も市民への支援を円滑にするためには、「自治体に任せきりではなくスケジュールの目安をつくること」「マイナンバー制度の見直し」を国がすべきだと指摘が集まった。

北海道空知管内の市役所職員Dさん
「発送時期やスケジュールの目安がないことで、自治体間の競争が起き、現場が疲弊しています。今後また大掛かりな給付があるときは、目安を示してほしいです。そうすれば、計画して集中的な業務ができるし、職員も見通しをもって仕事ができるので疲弊も軽くなると思います」

福島県福島市の市役所職員Cさん
「オンライン申請を開始するときに、システム障害の可能性を国はきちんと検討してくれたのかな、と思います。そもそもマイナンバー制度が始まってから、これほど多くの国民がマイナンバーを使って何かを申請する機会がなかったにも関わらず、この有事に一律支給という大規模な取り組みを、十分な準備のないまま進めてしまっている。高齢者や慣れていない方が突然オンライン申請をしたらトラブルになることは想定できるはずです。自治体業務が効率化できるのであれば良いと思いますが、高齢者のICTリテラシーとのギャップなど、まだまだ課題は多いです」

全日本自治団体労働組合の政策局長Bさん
「報道をみていると、これからマイナンバーカードをもっと活用しようとか、マイナンバーに個人の口座を紐付けようという話もあります。個人情報を国に集約するのであれば、「信頼感のある政府」を大前提としてほしい。この数年間、何度も公文書の改ざんや隠ぺいがありましたが、そこを改めてもらわないと、自治体で働く者として不安です」

個人に対するコロナ対策の給付は、今回が第一弾。十分とは言えず、野党は今後も追加の給付を求めていくが、同時に政策実行をよりスムーズにするための対策が欠かせない。政府の政策実行を監視するだけでなく、事務面での制度改善も提案していく。

岸参院議員「具体的な給付のスケジュールは自治体ごとに設定すべきですが、一方で今回政府は広報の仕方を誤ったと思います。4月末に決まった制度を5月に支給開始するのはどう考えても厳しい。急ぐべき給付だからこそ、自治体の現場で混乱なく支給できるように制度をしっかりと作るのが国の責任です。引き続き、現場の声を教えてください」

枝野代表「オンライン申請と住民基本台帳のデータを手作業で照会している、というのを先日知って、大変驚いていたところです。マイナンバー制度は、全体をきちんと整理しないといけません。

国と自治体の関係のひずみが、職員の皆さんのところにしわ寄せとして行っていると、ものすごく感じます。国が勝手に決めたことを十分な準備もなしに自治体窓口におろしてくる、といった事態を見直すきっかけにしないといけないと思います。コロナによる収入減が大きい方には、さらに支援が必要なのは間違いないです。どうしたら現場に負担をなるべくかけずにスムーズに給付できるのか、常に問題意識を持っていきます」

枝野幸男 YUKIO EDANO(立憲民主党 代表)
ホームページ https://www.edano.gr.jp/
Twitter  @edanoyukio0531

岸真紀子(立憲民主党 参議院議員)
 ホームページ https://kishimakiko.com/
Twitter @kishimakiko_j

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