2020年3月14日
改正特措法が成立 「消費税の議論より、生活や経営を救い安心感を確保するほうが優先順位が高い」福山幹事長
福山哲郎幹事長は13日夕、新型コロナウイルス感染症を新型インフルエンザ等対策特別措置法に規定する新型インフルエンザ等とみなす改正案が可決成立したことをうけ、記者団の取材に応じました。
福山幹事長は、現行法を適用するよう政府に求めてきた従来の立場を改めて表明した上、「政府は『適用できない』と言い続け、あえて改正案を出してきたわけですから、非常に遅い対応だった」「コロナ対策について、非常にまずい対応を重ねてきた」と語り、附帯決議で野党側の主張の多くが盛り込まれたことについては「当然のこと」と述べました。
記者からの主な質問とその回答(要旨)は以下のとおりです。
Q:これで政府側の立場として使えるようになったが、特措法の適用にあたり、どのような点に政府には注意してほしいか
いくつかの疑念があります。
緊急事態宣言について、しっかり事前に国会に報告すること。先般の学校一斉休校や、突然の中止要請のように理由も根拠が明らかでない状況が、今回の政権の対応にはいくつもある。特にこの法律を適用するにあたり、種々の問題について、この法律のどの部分を適用するか、しっかりと根拠や理由を国民に説明する責任が政府にある。そういった問題意識を付帯決議に盛り込んだ。政府はしっかりとこのことについて、やっていただきたい。
また、先般から問題になっている、放送機関に対して政府側の指示ができるかどうかについて、(宮下)副大臣が「指示をすることもあり得る」と答えました。われわれの政権のときには、政務官が「そもそも報道の内容については指示の対象にはなっていない」と国会で答弁をしています。こうした確認もせず、副大臣が軽はずみな答弁をしていることについて強い憤りと、森法務大臣の無責任な答弁との共通性を感じざるを得ません。
今日、報道機関の指示について、大臣から撤回、副大臣からも撤回と謝罪がありましたが、政権の法律に対するいい加減な答弁、無責任な答弁に、本当に憤りを持っており、国会審議にもっと誠実に対応するべきだ。
Q:衆院では宮下副大臣の答弁が修正される前に本会議での採決が行われたが
採決前に議事録の訂正をすべきだったと思いますが、そのことについてもできなかったことは、衆院の議決に非常に大きな問題を残したと言わざるを得ません。
Q:法案が成立し緊急事態宣言を発令できるようになったが、オリンピックや経済に与える影響をどのように考えるか
緊急事態宣言を皆さん少し誤解をされていると思います。
もうすでに総理は、緊急の中止要請や学校一斉休校など、突然発動をし、声明を発表し、現実には社会生活、経済生活が大変混乱し、生活が苦しくなっているご家庭が大変増えている。事業が継続できなくなっているところもたくさんあります。緊急事態宣言があろうがなかろうが、今のコロナの状況においては、社会が非常に不安に陥っているし、今日株価が暴落したことも含めて、経済的には大きな冷え込みが懸念をされます。この対応をまずやることが重要。
緊急事態宣言は、今、総理はそういう状況ではないと言われているので、ではどういう状況になれば緊急事態宣言をするのかが重要なので、来週からの国会では、このことについては総理にしっかりと答弁をいただきたい。
今、緊急事態宣言がどうのこうのというより、足元の経済生活が非常に危機的な状況に陥っていることについて、どう対応するのかを考えることがわれわれの役割だと考えております。
Q:今回の採決は党・会派として賛成だったが、一部、反対や退席をした議員もいた。この議員らへの対応はどうするのか
今日の採決が終わるまでは、まず法案の成立が優先だと思いました。来週、役員会がありますので、どういう対応をするか役員の先生方のご意見も伺いながら、本人のお気持ちや対応について聞き取りもしていきたいと思います。
今日、石垣議員が退席をされましたが、本人に聞いたところによると「『現行法で出来る』と言っている法案をわざわざ出して採決をし時期を遅らせた。こんなことは、単なる政府のパフォーマンスだ。このことに対して非常に憤ったので、採決云々というより、その抗議の意味をもって退席をした」と本人は言われています。党として賛成を決めました。みんな、いろいろな思いの中で賛成をしてくれましたが、この石垣議員の言葉についても、私は嘘はないと思いますし、一定、その気持ちも理解をします。しかし党として、その中でどうするかについては本人の話をもう一度聞き、役員会での対応を聞きながら対応を考えていきたい。
Q:宮下副大臣が答弁を撤回、謝罪したのは理事会の場であり、議事録には残らないが、このような場で撤回、謝罪したことについてどう思うか
参院で予算委員会もありますので、宮下副大臣も呼び、しっかりと答弁の撤回と謝罪、議事録に残るような形を参院ではしたいと思います。
衆院がその後、対応についてどう委員会の議事録に残すかについては、衆院で検討いただければと思います。来週早々、参院は予算委員会がありますので、総理の前でそのことについて謝罪、撤回をしていただくことは非常に重要だと思います。
Q:今後、立憲民主党として経済対策をまとめて政府に提案するか
今日、枝野代表とも話し合いをし、足元の経済状況について危機感を共有しました。
学校が休校になり、1人親の世帯や2人親の世帯でも、非正規で働いている世帯等も含めて、収入が減る可能性が高いことを、あちこちから聞いています。
私どもは、こうした世帯に対して、児童手当のスキームを使えば、いち早く子育て世帯に対して給付が可能になると思っております。小学校、中学校、特別支援学校レベルでは、約1000万人弱の子どもさんがいらっしゃいますので、ここに例えば2、3万円を児童手当のスキームで積み増ししていけば、一定の当座の救済措置になると思いますので、こうしたことを早急にやるべきだと政府に求めていきたい。
2点目は、入国制限、学校の一斉休校、イベント等の中止要請、こうした問題に直面し、直接的に売り上げがなくなったり、事業の継続が危ぶまれたりしている事業者や個人等が想像をする以上にいらっしゃる。今申し上げた、3つの政府の要請を前提に厳しい状況に陥った事業者や個人に対して、直接この損失をどう補填をしていくのか、どういうスキームなら救済措置になるのか、スキームを早急にまとめたいと代表とも話し、逢坂政調会長にも来週早々に指示を出し、具体的なスキームをまとめるようにしていきたい。
一番のリスク要因は、いつまでこの要請や感染の拡大が続くのかがわからないこと。期限がわからないということは、それだけリスクが長続きをする。それが国民の不安にも消費の抑制にも繋がりますので、いち早くスキームを国民に提示をすることで、不安を少しでも解消できる形の対応をしていきたい。
枝野代表も私も東日本大震災のときに、例えば、放射能汚染で乳牛や肉牛が全部だめになったものに対する農業者の補償スキームを作ってまいりました。もちろん一定のガイドラインは必要ですが、こうした形の直接的な補償スキームを早く示すことが国民の安心に繋がると考えております。
総理は意識されていているかどうかわかりませんが、「休業補償」という言葉を何度も使われました。一方で経産大臣はトーンダウンをして、融資や無利子という借金を強要するような状況を何度も言われています。政府は経済的損失を直接被った方々にどういう救済をするのか、メッセージがまったく今のところありません。われわれはいち早く対応を示し、政府に強く求めていきたいと考えています。
Q:新型コロナウイルス拡大で個人消費が落ち込んでいるが、幹事長が先ほど説明したスキームのなかで消費税減税といった政策はどう考えているか
株式市場の暴落、中国を含めたサプライサイドの混乱等々も含め、経済的に非常にリスクが高まっていると考えています。そしていろいろな自粛要請があり、今、まるで人が出ていない状況です。不安がたくさんあり、そして期限がいつまでかわからない状況のときに消費は上がりません。
今、消費税を下げる下げないという議論をするよりは、直接的な損失を被り生活や経営が成り立たなくなっているところを救う。そのことで一定の安心感を確保することが優先順位が高いと思っています。
全体の経済状況がどれほどこれから傷むのか、もしくは傷んでいくのか、消費がどれほど落ちていくのかについて見ないといけない。消費税を下げる下げないの議論をしても一定の時間がかかるわけですから、それよりも優先順位として早くやらなければいけないことがあると思っていますので、先ほど申し上げたことをいち早くまとめて政府に求めていきたい。
Q:与党の一部から出ている30兆円の予算を組むべきだとの意見の受け止めを
失礼ながら、規模の問題は、期限と直接被害を被って損出が出ている企業、事業体、個人の数がわからなければ、総額の経済対策の規模はわかりません。
それから直接しっかりと救済をするスキームなのか、融資というスキームなのかによっても、真水のお金(直接実際に必要な金額)がいくらかかるのかもまったくわかりません。15兆、30兆、何十兆という議論をするよりも、総理のどの要請にどの形で直接救済をしていくのかをまず固め、そこから被害額を算定する。真水で直接支給すべきと思っていますので、どの程度の金額になるのかを議論しなければならない。
宙に浮いた議論をしても、今、足元で明日の事業が続かないとか、明日の生活がどうなるのかわからないと思っている人たちの不安を取り除くことも救うことにもならない。
われわれとしては、総理の言った、入国制限、学校一斉休校、イベントの一斉中止の要請に対して直接被害を被っている方への直接支払いのスキームをつくることが優先順位としては高いと思っております。
「経済対策を」と言われる方がいらっしゃるのは当然のことなので、そのことは否定はしませんが、30兆だとか15兆だとか、何の根拠で言われているのかまったくわからないので、そのことについてコメントのしようがありません。