2020年1月22日
【衆院本会議】施政方針演説に対する代表質問 枝野代表が安倍政権に代わる政権の選択肢示す
衆院本会議で22日、安倍総理の施政方針演説に対する代表質問が行われ、立憲民主・国民・社保・無所属フォーラムを代表して枝野幸男代表が登壇。(1)「桜を見る会」をめぐる問題(2)「桜を見る会」に関連する公文書管理(3)閣僚等についての問題(4)政権ビジョン(5)経済財政(6)社会保障・教育子育て(7)エネルギー政策の転換(8)外交・安全保障――について取り上げ、安倍総理の見解をただしました。
枝野代表は、日本社会の現状について、超高齢化と人口減少が進むなか、消費増税が引き上げられた一方で老後の不安は高まるばかりであり、第2次安倍政権発足から7年が経過しても、いわゆるトリクルダウンは起こらず、多くの国民の皆さんは豊かさを実感できず、格差が固定化し、明日への希望を見いだせない国民が増えていると指摘。「日本経済の過半を占める個人消費は回復の兆しすら見せず、アベノミクスの限界は明確。総理の施政方針演説は、見たくない現実に目を背けた無責任なものと断じざるを得ない」と指弾しました。
その上で、「しかし私は悲観していません」と続け、私たちの国にある潜在的な力を引き出す新しい道を切り拓くため、安倍政権に代わるもう一つの政権の選択肢を示すと宣言。政権ビジョンとして「『支え合う安心』をつくる」「『豊かさの分かち合い』によって経済を活性化する」「『責任ある充実した政府』を取り戻す」――の3つの柱を挙げ、「社会全体で『支え合う安心』の仕組みを構築することで、老後の不安をなくし、子どもを産み育てたいと望む方々の希望をかなえることが可能な社会をつくる」「偏って存在している豊かさを分かち合うことで、多くの国民がその実感を持てるようにする。それが、可処分所得を実質的に拡大させ、国内消費を伸ばし、GDPの持続的成長につながる最大の経済対策となる。『分配なくして成長なし』。社会状況の変化を踏まえて経済政策を転換し、『豊かさの分かち合い』を進めることで、一人ひとりが豊かさを実感できる社会と、内需が着実に成長する経済を実現する」「『支え合う安心』も、適正公平に『豊かさを分かち合う』ことも、民間だけでは、市場原理では実現できない。昭和の終わり頃から、多くの先進国で『競争を加速することが正義、政府は小さいほど良い』という方向に大きく傾いたが、現状は、『民間でできないことまで民間へ』。背負うべき役割まで放棄した『小さすぎて無責任な政府』になっている。『小さな政府』幻想から脱却し、必要なことには『責任ある充実した政府』を、そして『民間でできないことはしっかりと官が責任を持つ』『まっとうな政治』を取り戻す。もちろん、立憲主義を回復させ、適正な公文書管理と情報公開を進めることは大前提」だと述べました。
枝野代表は、「最大野党の党首の責任として、『支え合う安心』と『豊かさの分かち合い』を実現する『責任ある充実した政府』をもう一つの選択肢として高く掲げる」と表明。立憲民主党はもとより、会派を共にする皆さん、連携協力する他の野党の皆さん、今の社会と政治に不安と不信を抱く多くの有権者の皆さんと、違いを認め合いながら幅広く力を合わせ、政権交代を実現する決意だと述べ、その大きな転換点の向こうに、明るい日本を切り拓くことができると確信すると力を込めました。
枝野代表の質問の全文は以下のとおりです。
2020年1月22日
施政方針演説に対する代表質問
立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム 枝野幸男
私は、会派を代表し、私たちが目指す社会について、もう一つの選択肢を示しながら、安倍総理に質問します。
1.「桜を見る会」をめぐる問題
もっとも、たいへん残念ですが、それに先立ち、安倍政権の体質そのものについて、たださなければなりません。
■ 公選法・政治資金規正法違反疑惑
「桜を見る会」の前夜祭は、会費が5,000円。入り口で会費を集めたそうですから、会費負担者と出席者とが一致しているはずです。提供された飲食等の出席者一人当たりの額は、都心の一流ホテルであることから、これを大幅に上回るとみるのが常識です。
この差額を後援会等で補填していればその分が買収となり公職選挙法違反です。会場ホテルが相場を大幅に下回る額で飲食等を提供していたならば、差額分が、政党等を除いて禁じられている企業団体からの寄付に該当し、政治資金規正法違反となります。国会議員としての正当性すら問われる違法行為の疑いが、極めて濃厚です。
ホテルには、発注者から求めがあれば明細書再発行に応じる義務があり、やましいことがないなら、明細書を入手し開示することで、簡単に疑いを晴らすことができます。開示すれば都合が悪い中身だから出せないのだと言われても仕方ありませんが、総理はなぜ、これをしないのか明確にお答えください。
総理は、前夜祭の主催者が安倍晋三後援会であることを国会答弁し、会見で、安倍事務所の職員が会費を受け取り、ホテルにまとめて支払ったことを認めています。これは政治資金規正法の収支に他なりません。
収支報告書には、前夜祭に関する記載が一切ありません。政治資金規正法違反は明白です。説明を求めます。
安倍晋三後援会が、不特定多数に呼びかけ「桜を見る会」の参加希を募っていた文書が明らかになっています。結果として、バス17台、約800人の地元の支持者が「桜を見る会」に招待され、無料で飲食の提供を受けました。
「桜を見る会」は、後援会の不特定多数に呼びかけて参加者を募ることのできる性格のものなのですか。「桜を見る会」の一般的な招待基準とともにご説明ください。
このようなことは、公職選挙法違反の買収と実質的に何が違うのですか。また、交通費、宿泊費など参加に関する諸経費は、参加者が全額自己負担していることで間違いありませんか。明確にお答えください。
これらの疑惑に対し、総理は、多くの国民が納得できる説明をするどころか、説明そのものからから逃げ回ってきました。あなたが、疑惑まみれのままその地位にとどまり続ければ、日本社会のモラル崩壊が続くばかりです。潔く、総理の職をみずから辞すことを強く求めます。
■ 反社会勢力の参加
問題はこれに留まりません。「桜を見る会」に、反社会勢力と見られる参加者がいたと指摘されています。
政府は、個人情報という理由で招待者名簿の公開を拒否し、反社会勢力は定義できないと、取締り現場を困惑させる支離滅裂な説明をしています。
「桜を見る会」の招待者は、一定の功績等があった方ですから公開に問題ないはずです。当然に公開対象となっている叙勲を受けた方や園遊会招待者との違いを含め、公開しない理由を具体的にご説明ください。また、反社会勢力は定義できないという答弁を本当に維持するのかもお尋ねします。
■ ジャパンライフとの関係
詐欺まがいの消費者被害を招いたジャパンライフの山口元会長が、「桜を見る会」に招待されていました。同社は、「桜を見る会」に招かれたことを、みずからが信用できる企業であると宣伝するために利用していました。
山口元会長は、招待者区分60番。過去の政府資料によれば、区分60番は総理大臣枠です。総理の枠で招待されたのではないですか。それが、結果的にジャパンライフによる被害拡大につながったのではないですか。被害者が納得できるような説明を求めます。
2.「桜を見る会」に関連する公文書管理
■ 昨年の招待者名簿
昨年分の招待者名簿は、野党から資料要求がなされた1時間後に裁断されました。これをたまたまなどという都合の良い偶然など、多くの方が信じていません。総理の認識を伺います。
電子記録について、担当者の「記憶」に基づいて確実に消去したと説明しています。他方で、廃棄記録、いわゆるログの存在は認めていますが、調査・開示するよう求めると、担当者の説明を信じるから調査も開示もしないとの答えです。
なぜ記憶より確かな記録を調査し開示しないのですか。意味不明です。記録を調査したら都合が悪いからとしか思えません。ログの調査と開示を強く求めます。
さらには、正式な公文書の形でなくても、関係官署に名簿が残っている可能性が濃厚です。昨日も新たな資料が出て来ました。再調査と開示を指示するよう求めます。
それぞれ明確にご回答ください。
■ 一昨年までの招待者名簿
2017年までの招待者名簿は、公文書管理法で義務付けられた管理簿への記載がなく、保存期間満了後に義務付けられた内閣総理大臣との協議や廃棄簿への記載もありません。
菅官房長官は、会見で、民主党政権時、2011年と12年の不記載を漫然と続けた旨、説明しましたが、2011年と12年は、「桜を見る会」が開催されず、招待者が確定しなかったため、決定事項を印した招待者名簿も作られようがありません。意思決定の途中段階で作成された文書と、最終的な決定事項を印した招待者名簿とでは、文書の性格が決定的に異なり、保存期間を含め公文書管理法上の扱いも異なります。前政権への印象操作にほかならず、説明になっていません。
踏襲すべき前例となる2010年には、管理簿への記載等がなされています。前例に反して違法な扱いに変更することを、担当者限りでできるとは思えません。官房長官等から指示や示唆があったのではないか。だからこそ担当者に軽い処分しかできなかったのではないか。明確な答弁を求めます。
■ いわゆる「白塗り」問題
いわゆる「黒塗り」ではなく、「白塗り」された文書が提出されました。
「黒塗り」についても、その対象が広すぎる問題はありますが、どこに非公開部分が存在するのかを知ることができます。しかし「白塗り」では、文字があったことすら分からなくなり、意味が違います。一貫して「黒塗り」で対応してきたのに、「白塗り」文書が作られたことは、意図的としか言いようがありません。刑法の公文書変造罪にも該当しかねない重大な違反行為です。
さらなる事実関係の解明と官房長官を含む担当者への重い処分が必要だと考えますが、総理の見解を伺います。
3.閣僚等についての問題
■ 秋元司元副大臣の逮捕・起訴とカジノ問題
秋元司.元IR担当副大臣が逮捕されました。IR整備法が議論されて成立したまさにそのときに、安倍総理が任命した担当副大臣でした。逮捕容疑は、当時の職務権限に関連するものです。所属国会議員の属人的な問題ではありません。安倍政権の職務行使そのものの問題であり、その責任は極めて重いことを、総理は認識しているのですか。端的にお答えください。
カジノは、持統天皇以来の伝統に反して、規律ある日本社会を壊す賭博行為そのものです。あらゆる世論調査で6割以上が反対しており、カジノは要らないというのが大方の国民の声です。私たちは、これまでの議論でも、金権、利権まみれの状況を生むと懸念してきましたが、今回の件ではっきりしました。
政府は、異論や不祥事などなかったかのように準備を進めていますが、とうてい容認できません。安倍内閣の成長戦略は汚れたカジノに頼らざるを得ないものなのでしょうか。
野党は共同して、20日にカジノ推進法・整備法廃止法案を提出しました。今国会はいわば「カジノ国会」です。速やかに審議して成立させるべきです。総理の答弁を求めます。
■ 二閣僚の辞任と説明責任
改造後、短期間で、二人の重要閣僚が辞任に追い込まれました。
総理は辞任に際して、『責任を痛感している』とおっしゃいましたが、さらに前法務大臣が検察による強制捜査の対象となるという前代未聞の事態にまで至り、どのように責任を取るのか、具体的にお答えください。
二人の閣僚は、長期にわたって雲隠れし説明責任を果たそうとしませんでした。最近になってようやく記者対応の場こそ作りましたが、いずれも具体的な説明はありませんでした。みずからが任命した元閣僚が説明責任を果たすことには、総理ご自身にも責任があります。二人が説明責任を果たしたと受け止めているのか、認識を伺います。
4.政権ビジョン
■ 日本社会の現状
超高齢化と人口減少が進む中で、一年間に生まれる子どもの数は90万人を切りました。消費税率が引き上げられたにもかかわらず、医療費の窓口負担を引き上げようとする動きなどが伝えられ、老後の不安は高まるばかりです。
七年が経過しても、いわゆるトリクルダウンは起こらず、多くの皆さんは豊かさを実感できていません。格差が固定化し、明日への希望を見いだせない国民が増えています。日本経済の過半を占める個人消費は回復の兆しすら見せず、アベノミクスの限界は明確です。総理の施政方針演説は、見たくない現実に目を背けた無責任なものと断じざるを得ません。
しかし私は悲観していません。
日本は、戦後復興から高度成長へと人口も経済も急激に拡大してきた昭和の後半から、平成期を挟んで、人口減少社会、成熟経済へと大きく変化しました。その中で、社会状況に合わなくなったにもかかわらず、昭和の成功体験にとらわれ、無理やり引っ張り続けてきた多くのことが、限界に達し、矛盾を露呈してきたのが現状です。
限界が見えてきたからこそ、何をどう変えていくのかが明らかになり、新しい道を切り拓いていくことができます。今、政治を変え、新しい道を切り拓くことができれば、私たちの国には、またまだ潜在的な力があります。
私は、潜在力を引き出す新しい道を切り拓くため、安倍政権に代わるもう一つの政権の選択肢を示します。
■ 支え合う安心
第一に、「支え合う安心」を作ります。
本来、超高齢社会とは、人類が夢見てきた長寿社会にほかなりません。そのこと自体は望ましいことのはずです。ところが、老後の不安が大きくなる一方だから、高齢化社会を後ろ向きに受け止めざるを得ない方が多くなっています。
人口減少は続いていますが、潜在的なものも含めれば、子どもを産み育てたいと望む方々は多く、その希望をかなえることが可能な社会を作れば、一定程度歯止めをかけることができます。
老後も、子育てや教育も、かつては個人や家庭に委ねられていました。しかし、今の日本では、いずれも自分の力だけではどうにもなりません。自己責任に帰すのでは不安が広がるばかり。今こそ、自己責任論から脱却し、社会全体で「支え合う安心」の仕組みを構築しましょう。私は、これこそが、政治の最大の役割であると明確に位置づけ、その役割を担う新しい政権を作ります。
■ 豊かさの分かち合い
第二に、「豊かさの分かち合い」によって経済を活性化します。
バブル崩壊後のGDP国内総生産の成長率は、2018年までの平均で1%未満。昭和の終わり、バブル前の10年と比較すると実質で4分の1、名目では10分の1にもとどきません。施政方針でいくら虚勢を張っても、この基本構造は、アベノミクスの七年間も何ら変わっていません。
その原因は、ひとえに国内でお金が回らないことです。海外との関係で、日本が貧しくなったわけではありません。
同じ期間の輸出の成長率は実質で4.1%、名目でも2.9%。昭和の終わりの10年と比較して6割程度の成長をしています。国際収支も、一時的なマイナスはありますが、黒字基調が続いており、海外との関係では、日本はこの間も豊かさを拡大し続けています。
経済が低迷している主要因は、輸出ではないのです。低下しているとはいえ、今なお日本は一定の国際競争力を持っています。国全体が貧しくなったのではなく、一人ひとりに行き渡らないため、多くの国民が豊かさを実感できず、消費を冷え込ませ経済を低迷させているのです。
国際競争力を維持拡大させるための努力は、今後さらに強化する必要があります。しかし、それと同等以上に、偏って存在している豊かさを分かち合うことで、多くの国民がその実感を持てるようにします。それが、可処分所得を実質的に拡大させ、国内消費を伸ばし、GDPの持続的成長につながる最大の経済対策となります。
また、若年人口が減り続ける中で国際競争力を維持・強化していくためにも、すべての若者が個々の持ち味を発揮できるような「学ぶ機会」を保障します。貧困などによって「学ぶ機会」が奪われている若者を、豊かさの分かち合いによってなくしていきます。
昭和の高度成長期は、「成長するから分配できる」時代でした。しかし、バブル崩壊後の平成期は、大企業が成長して大きな利益を上げても、賃金や下請けなどに分配される部分や国内投資に回る部分が限定され、内部留保が積み重なるばかり。適正な分配がなされないために可処分所得が伸びず、経済の過半を占める内需が成長しないことで、全体としての経済成長の足を引っ張っています。この実態から目を背けても経済の安定的発展はありません。
「分配なくして成長なし。」
私は、社会状況の変化を踏まえて経済政策の根本を転換し、「豊かさの分かち合い」を進めることで、一人ひとりが豊かさを実感できる社会と、内需が着実に成長する経済を実現します。
■ 責任ある充実した政府
第三に、「責任ある充実した政府」を取り戻します。
「支え合う安心」も、適正公平に「豊かさを分かち合う」ことも、民間だけでは、市場原理では実現できません。
昭和の終わりころから、多くの先進国で、「競争を加速することが正義、政府は小さいほど良い」という方向に大きく傾きました。日本では、「民間でできることは民間で」「小さな政府」などという言葉が、絶対的な正義として語られました。
しかし現状は、「民間でできないことまで民間へ」。背負うべき役割まで放棄した「小さすぎて無責任な政府」になっています。
民営化の先で生じた、かんぽ生命の問題。大学入学共通テストの民間丸投げ。公営に限定されてきたギャンブルを民間開放しようとしたカジノ。
さらには、非正規化と定員抑制を進めすぎた挙句、長時間労働が常態化して正規でも希望者が激減し、非正規が集まらなくなっている教職員の世界。常勤職員が不足して大規模災害対応がパンクしている地方自治体。介護サービスの不足や待機児童の問題も、民間だけでは対応できない広い意味での政府の仕事です。
今こそ、「小さな政府」幻想から脱却し、必要なことには「責任ある充実した政府」を、そして「民間でできないことはしっかりと官が責任を持つ」「まっとうな政治」を取り戻します。もちろん、立憲主義を回復させ、適正な公文書管理と情報公開を進めることは大前提です。
■ 決意
私は、最大野党の党首の責任として、「支え合う安心」と「豊かさの分かち合い」を実現する「責任ある充実した政府」をもう一つの選択肢として高く掲げます。そして、立憲民主党はもとより、会派を共にする皆さん、連携協力する他の野党の皆さん、そして、今の社会と政治に不安と不信を抱く多くの有権者の皆さんと、違いを認め合いながら幅広く力を合わせ、政権交代を実現する決意です。
以下、こうした政権ビジョンに基づき、いくつかの重要項目に絞って質問します。
5.経済財政
■ 実質賃金・実質可処分所得
暮らしの豊かさを示す実質賃金指数や実質可処分所得は、2005年ころから2009年ころにかけて急激に低下しました。そして、安倍総理が「悪夢」とおっしゃる時期は、むしろ回復傾向にあったものの、2013年に再び大きく下落して回復の兆しを示していません。安倍政権は、一部には好転させた数字があるものの、一人ひとりの暮らしの真の豊かさについては、これを膨らますどころか、むしろ低下させているのです。
アベノミクス七年。その転換なくして、暮らしの豊かさを取り戻すことはできません。
私たちは、一貫して訴えてきたとおり、まずは第一歩として、政治が直接関与できる低賃金労働者について、合理的な賃金引上げと正規雇用化を図ります。
保育士や介護職員等、第一に公的な資金配分の多寡によって支払いうる賃金に制約がある分野であって、第二に低賃金であるために人員の確保に困難をきたし、第三に需要が大きいにもかかわらず供給が不足している公的サービス分野について、大幅な賃金引き上げを図るべく、資源配分を大胆に転換します。
また、定員削減という美名の下で、必要な人員まで削られ、あるいは非常勤化が極端に進んでいる地方公務員や公立学校教職員、ハローワーク職員や消費生活相談員等の常勤雇用化や定数の適正化によって、特に地方に対する再分配を強化します。
総理は、七年かけても実現できなかった実質賃金や実質可処分所得を増やすことを、どのような手段で、いつごろまでに実現しようとしているのか。具体的にお答えください。
■ 所得税の非累進性
昨年10月、私たちの強い反対を押し切って、消費税が10%へ引き上げられました。消費を冷え込ませ、国民生活をより厳しいところへ追い込んでいます。今、必要なのは、広く薄く負担をお願いすることではなく、適正公平に豊かさを分かち合う仕組みです。
日本の所得税は、累進課税であると言われています。しかし、株式譲渡所得のほか多くの金融所得は分離課税の対象となり、所得税は15%、住民税は5%です。そして、高所得者ほど所得に占める株式譲渡所得等の割合が高いことから、ある段階から、所得税の実質的な負担率は所得が増えるにつれて低下しています。
国税庁の標本調査から試算すると、1億円までは所得が増えるほど所得税の負担率は高くなりますが、これを超えると順次低くなり、所得100億円超では所得2,000万円程度と同じくらいの負担率まで下がります。日本は真の累進課税ではありません。この認識で間違いないか。これで良いと思っているのか。総理にお尋ねします。
私は、株式譲渡所得など金融所得課税を累進化しつつ強化した上で、将来的に総合課税化を目指します。総理の見解を伺います。
6.社会保障・教育子育て
■ 社会保障制度改革の視点
政府は、高齢者医療や介護に関し、いわゆる窓口負担の引き上げや、保険給付の対象を小さくすることなどを進めています。
しかし、医療費や介護費用については、いざという時に、いくら、何年間必要になるか予測がつきません。ごく一部の超高額所得高齢者を除けば、それなりの所得や資産のある高齢者であっても、大きな不安を抱いています。中低所得者であればなおさらです。
窓口負担を引き上げることや給付対象を絞り込めば、否応なくこうした不安が高まります。進めるべきは公的給付の縮小ではなく、税や社会保険料という将来の見通しが比較的つきやすい負担について、高所得高齢者を含め支払能力に応じてお願いすることです。また、高所得高齢者について、税を原資とする部分の支給制限、いわゆるクローバックの仕組みを検討すべきです。
税については不十分ながらも累進性が採られている一方で、社会保険料については、原則として定率な上に、比較的低い金額で上限が頭打ちになり、所得が増えるほど負担率は下がります。社会保険という制度の本質を維持しつつも、定率、逆進的な保険料負担について、応能負担の方向で抜本的に見直すべきです。
以上三点について総理の見解を求めます。
■ 保育所無償化の問題点
昨年10月、待機児童問題を放置したまま、保育所等の無償化がスタートし、私たちが危惧した弊害が各所で表れています。
一つは低所得世帯の実質負担増です。元々保育料が免除されていた方などに無償化の恩恵はほぼありません。それなのに、無償化による財政負担が大きくなった自治体等で、それまで免除していた給食費等の徴収を始めたため、負担増になっている低所得所帯が出ています。
基本となる保育料が免除された結果、保育料を払って延長保育を利用してもトータルの負担が減るため、その利用が急増しているケースが見られます。これ自体は歓迎すべきですが、保育士の待遇改善が進んでいないため、延長保育に対応した保育士を確保できず、個々の保育士の負担がさらに大きくなっています。このままでは重労働に耐えられず離職する保育士が増え、保育士不足がますます加速します。
これら二つの事例について、どのような実態把握をしているのか、総理にお尋ねします。
今からでも遅くはありません。少なくとも無償化に要した予算規模に匹敵する以上の予算を振り向け、保育士の処遇改善と人員確保を進めること。そして、低所得世帯が実質的な負担増にならない措置をきちんと担保することを、強く求めます。総理の見解を伺います。
■ 子どもを産み育てることへの支援
少子化対策が叫ばれる中、希望しながら子どもを持つことができない方がいます。
経済的理由で、希望しながら子どもを産み育てることや家庭を持つことを諦めている方や、そうした希望について考える余裕さえない方などを「豊かさの分かち合い」を進めることで減らしていきます。これこそが重要な少子化対策の一つです。総理の見解を伺います。
いわゆる不妊・不育治療、生殖補助医療を受けている皆さんは、肉体的、社会的、そして極めて大きな精神的負担に苦しんでいます。生殖補助医療について、せめて経済的負担だけでも軽減するよう、保険適用するか、国の責任で保険適用された場合と同程度の補助を行うかするべきです。認識をお示しください。
7.エネルギー政策の転換
今や、世界の電力の4分の1は自然エネルギーで作られ、原子力発電の2倍にあたります。自然エネルギーのコストは大幅に下落し、原発ゼロはまさに「リアリズム」です。地域分散型の再生可能エネルギーや住宅断熱化等は地方の活性化にもつながります。
原発事故を経験した日本だからこそ、原発ゼロを明確に掲げ、再生可能エネルギーや蓄電、断熱などの技術革新や普及拡大にシフトすべきですが、いかがでしょうか。
8.外交・安全保障
■ イラン情勢・自衛隊派遣
自衛隊の中東派遣について、基本的な前提として、何を「調査」し、何を「研究」するのでしょうか。また、なぜ堂々と特措法の提案などをしなかったのですか。明確な答弁を求めます。
■ 日ロ関係・北方領土問題
総理は昨年の施政方針演説でも、戦後日本外交の総決算を宣言していました。では、領土問題を解決して平和条約を締結すると言明した日ロ関係について、この1年でいったい何が進展したのか。過去一年間の「総決算」の具体的内容についてお答えください。
■ 辺野古新基地建設問題
辺野古新基地建設について、防衛省の地盤改良工事に関する「技術検討会」で、本体工事が9年3か月に延びた上、総工費も約9300億円に膨れ上がることが明らかになりました。軟弱地盤の改良が成功したとしても米軍への引き渡しは2030年代以降になるといわれています。この事実関係に間違いないかお尋ねします。
県民の反対を無視し、莫大な税金を投入して工事を強行しても、普天間基地の危険を除去することができるのは10年以上も先です。もはや唯一の選択肢という前提は崩れています。今こそ立ち止まって考え直すべきです。総理の見解を伺います。
■ 防衛予算
本来、災害対応等、緊急の対応が迫られている場合に限って編成される補正予算で、戦闘機やミサイルなど高額兵器を購入するのは趣旨を逸脱しています。本予算に計上すべきF-35Aなど正面装備の購入費を補正予算案に組みこんでいる理由を、財政法などを踏まえてご説明ください
令和二年度本予算案には、設置場所も決まっていないイージス・アショアに129億円が計上されています。イージス・アショアの設置が、コスト面・運用面でイージス艦の配備より優れていると言えるのか、具体的根拠を示してご説明下さい。
9.結び
国民の皆さん、特に将来への展望を見失っている若い皆さん。困難と闘っている皆さん。この国には、今なお経済的な豊かさをはじめ有形無形多くの蓄積があります。これを活かして、「豊かさを分かち合い」、「支え合う安心」の仕組みを構築すれば、一人ひとりの暮らしに豊かで明るい未来が拓かれます。それを作ることができるのは、政治だけです。政治を動かすことができるのは主権者である皆さんです。多くの高校生が、大学入学共通テストの問題で「動けば変わる」ことを実感されたと思います。
高度成長やバブル景気の恩恵を受け、その再来を期待している皆さん。社会構造が大きく変化したこれからの日本に、同じことは起きません。しかし、この間に積み上げてきたものを活かせば、安心して年を重ねることのできる長寿社会を実現することが可能です。そのために、「責任ある充実した政府」を作ろうではありませんか。
私は、2009年からの非自民政権で、官房長官や経済産業大臣として、千年に一度とも言われた東日本大震災の対応にあたりました。至らない点、ご期待に応えられなかった点があったことを率直にお詫びしながら、しかし、その経験と教訓があるからこそ、そしてそれを活かすからこそ、皆さんとともに、明治維新にも匹敵するこの大きな転換点の向こうに、明るい日本を切り拓くことができます。
立ち止まったり、後ろを振り返ったりするのでなく、ぜひ、私と一緒に、未来に向けて「右でも左でもなく前へ」一歩を踏み出しましょう。私には、あなたの力が必要です。