2019年12月24日
党ひきこもり対策WTが岡山県総社市を視察
党ひきこもり対策ワーキングチーム(WT)は23日、岡山県総社市を訪れ、同市のひきこもり支援策についてから片岡聡一市長はじめ市の保健福祉部や社会福祉協議会の職員、ひきこもりサポーターらから話を聞き、実態把握に向けた取り組みや支援のあり方などについて意見を交わしました。視察には、WT事務局長の堀越啓仁衆院議員と、羽場頼三郎(岡山市)、富野和憲(香川県高松市)、鈴木美香(香川県小豆島土庄町)、山戸重治(広島県尾道市)、松尾憲(京都府久御山町)、米村和彦(神奈川県)、上町弓子(東京都東村山市)、腰塚菜穂子(埼玉県熊谷市)各自治体議員が参加しました(写真上は、居場所「ほっとタッチ」で、ひきこもりサポーターと懇談する堀越衆院議員ら)。
同市では、「ひきこもり」の定義を「中学卒業後であって、おおむね6カ月以上、社会から孤立している状態」として支援。社会福祉協議会で障がい、生活困窮、権利擁護に関する相談を推進するなかで「ひきこもり」と思われる方の存在を確認、実態把握、専門的支援の必要性のある課題として検討を始め、2017年度から市の独自事業として支援を展開(委託により社会福祉協議会が実施)、地域住民を巻き込み社会的排除を生まない仕組みに配慮した取り組みを進めています。
同市の「ひきこもり支援」の特徴としては、(1)ひきこもり支援センター「ワンタッチ」の開設(2)常設居場所「ほっとタッチ」開設(3)ひきこもり家族会「ほっとタッチの会」設立――の3つが柱。「ワンタッチ」はセンター長1人、支援員2人が在籍し、専門の相談員(社会福祉士・精神保健福祉士)による訪問・電話・メールでの相談対応、空き家を1軒借り上げて開設された「ほっとタッチ」では専門職と「ひきこもりサポーター」養成講座を受講した地域の方々、ひきこもりサポーター(現在の登録者数61人)が寄り添い、社会参加に向けて少しずつ支援、「ほっとタッチの会」では毎月1回、ひきこもりについて理解を深めながら、家族間での交流を図りリフレッシュ、悩みを共有することで、ひきこもり家族の「孤立」を防ぐ、としています。
同市では、ひきこもりの予防として、派遣登校支援員による長期欠席の児童・生徒の状況把握と分析・整理など義務教育の段階での取り組みに力を入れているのも特徴です。
片岡市長は、ひきこもりセンター「ワンタッチ」開設の経緯や取り組み概要について説明し、特に「ひきこもり」が本人や家族のせいではなく、社会全体の課題であると強調。「8050問題など最近顕在化してきたが、私の同級生でも『あいつ、ずっとおらんよな』という人間がクラスに1人はいた。これは古典的な問題であるにもかかわらず見て見ぬふりをし、社会から抹殺されてきた」と指摘し、ひきこもりは生活困窮、発達障害といった、いまあるさまざまなテーマの延長線上にある問題だとの認識を示しました。
政府は日本全国で少なくとも115万人のひきこもり者がいるとの数字を出し、岡山県は2万人、その類推から総社市には600人いると言われ、「救えるものがあるなら市としてやるべきだ」と2014年、ひきこもりが何人いるかを数えるよう指示したという片岡市長。15年8月、市の関係部署や社会福祉協議会のほか、ハローワーク、医師会、民生委員児童委員協議会等の地域の関係者で構成した「ひきこもり支援等検討委員会」を設置、16年1月から9月にかけて市内17地区で懇談会を開き、問題意識を共有・醸成するとともに、実態把握により市内に少なくとも207人のひきこもりがいるとの結果が出て、具体的な支援の実施へと動いていきました。
片岡市長は、今年8月に同市で開催した「全国ひきこもり基礎自治体サミット」で基礎自治体が「ひきこもり支援」を行う意義・必要性を全国へ発信したことも紹介。そこでは、社会一般にある、「ひきこもりの人間は怠け者で、敗北者、何か精神的に病気がある、弱いやつだ」という意識を「ひきこもっている人はピュアで、生真面目一本だから出てこられない。善人、正直者」へと「ひきこもりの方々に対する意識、考え方を変えていくこと」、そして、「彼らをひきこもりの状態にさせたのは地元の市長や市役所が悪い。学校現場で打つ手はなかったのか、こんな競争社会に誰がしたんだといった反省に立って社会を変えてく。できる子よりもできない子に目配せしながらやっていく教育現場を作っていくこと」を確認したと述べました。
もがき苦しんでいるひきこもり者は全国にいるにもかかわらず、支援窓口がないために他府県から総社市に駆け込んでくる人が数多くいるとして、国の予算頼みで「お金がない」というのではなく自腹でやったらいいと主張。「それによって全国で115万人が、死にそうになった心が救われる。ぜひ先生方には地元に持ち帰って実行に変えていただきたい」と呼びかけました。
その後、常設居場所「ほっとタッチ」を訪れ、ひきこもりサポーターの方と懇談。支援する、されるという関係ではなく地域住民として一緒の時間を過ごすこと、意見するのではなく相手の立場に寄り添って話を聴くことなどを心がけているという、サポーターの方とのふれあいを通じて、当初部屋にいることの多かった人が自然に食堂に集うようになったり、「(サポータの方の)学生の頃の話を聞かせてほしい」と言ってきたという話を聞きました。
懇談後に記者団の取材に応じた堀越議員は、「市長の思いがこうした形になっているのは素晴らしいをことだと思う。何よりも『ひきこもり』を社会問題としてとらえ、それが政治の責任によるものだと明言され、こうした取り組みにつながっていることに感動した。こうした取り組みを日本全体に広げていかなければいけない」と発言。参加した自治体議員らに対しては「議会のなかで取り上げていただき、首長、あるいは自治体議員で密なコミュニケーションを取って、ひきこもり対策については個人の問題ではなく社会の問題だと価値観を変えていくため議会を動かしていってもらいたい」と求め、自身も国政の場でしっかりと取り上げていく考えを示しました。