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2018年3月9日

原発ゼロ基本法案の提出にあたって―原発ゼロ・エネルギー転換の実現は、未来への希望

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原発ゼロ基本法案の提出にあたって
原発ゼロ・エネルギー転換の実現は、未来への希望

立憲民主党代表 枝野幸男

 本日、2018年3月9日、原発ゼロ基本法(正式名称:原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革基本法)を、立憲民主党、日本共産党、社会民主党、自由党が共同し、衆議院に提出いたしました。なお本法案には、無所属の会の一部議員の賛同も得ての提出です。

 本法案は立憲民主党の基本政策の柱であり、国民との約束として掲げた「1日も早く原発ゼロへ」を具現化するものです。「原発ゼロはリアリズムです」とお訴えてしてきましたがまさに原発ゼロ実現への第一歩となる法案です。

 あれから7年の歳月が過ぎようとしています。2011年3月11日、東日本大震災とともに発生した東京電力福島第一原子力発電所事故は、これまでの経済性や効率を優先する原子力発電に依存する経済社会システムに対し大きな疑問を投げ掛け、その抜本的な変革を迫るものとなりました。

 遡ること1965年5月、東海原子力発電所が臨界に達し発電を開始して以来、我が国は原子力の平和利用の名のもとに、原子力発電の推進に力を入れてきました。当時から放射線による人体や環境への悪影響、使用済み核燃料の処理技術が未確立であることなど、多くの不安・反対の声もありましたが、発電コストが安価である、二酸化炭素を発生させない、核燃料サイクルによりエネルギーを無限に手にできるなどの主張が、原子力発電に対する警鐘を打ち消し、ついには日本の原発では事故は発生しないとの「安全神話」を生み出すこととなりました。

 そのような中、東京電力福島第一原子力発電所で全電源喪失、炉心溶融、水素爆発という最悪の事故が発生し、広がる放射能汚染が日本社会全体に大きな影を落とすこととなりました。事故収束、復興への多くの方々の献身的なご努力にあっても、いまなお復興への道は険しいと言わざるを得ないと感じています。

 原子力発電は、たとえ事故が発生しなくとも、使用済み核燃料、放射性廃棄物の処分問題や常に被曝の危険をともなう労働者の問題など、多くの矛盾をはらんでいます。そのリスクは人類の生存を脅かすほどのものがあり、人知を越えた存在であるとの認識も広がっています。原発の問題は倫理の問題だと言われるゆえんはここにあります。

 こうした原子力発電の厳しい現実に直面したいま、私たちには、わが国のこれまでの原子力政策が誤りであったことを認め、東京電力福島第一原子力発電所事故の原因の更なる究明とその責任の明確化、事故の早期収束、すべての被災者の人権の回復に全力を尽くすと共に、速やかに全ての原子力発電所を停止し廃止する責務があると考えます。

 原発廃止は負担と困難のみを意味するものではありません。原発廃止・エネルギー転換の実現は、未来への希望でもあります。原子力発電所事故の経験から学び、人材を育て、新たな廃炉技術、放射性廃棄物の管理技術の研究・実用化を進め、原発ゼロへの確かな道筋を示すことにより、日本は世界の廃炉先進国として原発のない世界の実現に貢献することができます。

 原子力発電を利用せずに電気を安定的に供給する体制を早期に確立することは緊要な課題です。そのために必須な省エネ・再生可能エネルギー利用拡大は、新しい環境調和・分権型社会システムの創造、新たな経済発展の契機でもあります。地域主導の再生可能エネルギー発電事業は地域における経済循環を生み出し、地域経済の再生、地域社会の自立に繋がります。特に、国はこれまで原子力発電事業に協力し日本の経済社会を支えてきた原発関連施設立地自治体に対し、原発依存から脱しつつ、雇用の確保、新しい経済自立を目指す取組を最大限支援する責務があります。

 日本の原発廃炉と省エネ・再生可能エネルギーへの転換は、原発輸出ではない新たな輸出産業となるものであり、エネルギーをめぐる紛争のない世界の実現に向けた大きな貢献ともなります。さらに日本が原発廃止・エネルギー転換を実現し脱炭素社会への道を歩み出すことは、地球規模の緊急課題である気候変動問題への解を世界に示すことにもなります。こうした、原発ゼロへの政策転換は、広島、長崎の原爆被爆を経験し核なき世界を希求する日本の責務です。

 この法案の作成に当たっては、日本全国でタウンミーティングを開催、国会内でも多くの関係団体の皆様、国民の皆様との対話を重ねてきました。いま、その成果がこの法案に結実しています。政治の不退転の決意と国の政策的挑戦に加え、地方自治体、企業、そして国民一人ひとりの協力があれば、必ずや、基本法に掲げた目標は達成することができます。持続可能な社会を実現するために、速やかに全ての原子力発電所を廃止し、省エネ・再生可能エネルギーへのエネルギー転換を図る改革に着手すべく、まずはこの基本法の成立を目指して今後も国民の皆様と共に歩んで参ります。