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2020年4月18日

国内最大規模の集団感染が発生した千葉県の障がい者施設「北総育成園」で、今起きていること

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新型コロナウイルス感染拡大の中、3月28日に千葉県船橋市の障がい者支援施設「北総育成園」(所在地:千葉県東庄町)で、ダイヤモンド・プリンセス号を除けば国内最大規模のクラスター発生が発覚した。感染源は明らかになっていないが、3月28日時点でスタッフ67人中40人が陽性と判定。その後検査が進んで陽性の人数は増え、4月10日時点で施設にいる入所者65人(軽症者含む)に対し、介助スタッフは通常の半分以下の12人しか稼働できていない。

入所者の命を守るために、現場は苦しい中での試行錯誤を強いられている。千葉県船橋市の津曲俊明市議は、クラスター発生後、北総育成園を運営する「社会福祉法人さざんか会」(所在地:千葉県船橋市)の理事、旧知の泉一成さんと連携しながら、どうにか現場の状況を改善すべく各方面に働きかけを行ってきた。

緊急事態宣言が発令されてから3日後の4月10日、立憲民主党代表枝野幸男、党の障がい者・難病プロジェクトチームの道下大樹衆院議員が、津曲市議のコーディネートのもと、泉さんからのヒアリングをオンラインで行った。そこで語られたのは、現在の政治が取りこぼしている現場の実情を訴える、切実な当事者の声だった。

※写真は左上がつまがり市議、右上が泉さん、右下が道下議員、左下が枝野代表

スタッフ67人中40人が陽性、厳しい現場からのリポート

ヒアリングでまず語られたのは、平時の半数以下の介助スタッフだけで、通常以上の業務を担う現場の厳しさだ。入院や自宅待機のため調理員全員が稼働できないため、通常時は調理員が各入所者に合わせて行っている刻みやとろみづけといった作業のほか、検温など追加の仕事を介助スタッフが担っている。スタッフは責任感を持って働くあまり、過労やストレスによる体調不良も心配される実態が浮き彫りになった。

県や市からは医療スタッフの応援派遣はあるものの、調理員や介助スタッフの派遣はないという。さざんか会は船橋市内で複数の障がい者支援施設を運営しており、他施設の事業を縮小して応援スタッフを手配したが、派遣できたのは4月10日時点で4人にとどまる。特に夜勤が不足している。

泉さん「朝の検温は、入所者一人ずつ検温器のアルコール消毒をするので、時間がかかります。昼、夜の食事は通常の給食ではなく、千葉県知的障害者福祉協会のご協力で臨時にお弁当の宅配をしてもらっています。ただそのままで食べられない利用者には、介助スタッフが刻む、とろみをつけるなどしていて、届いても本人たちに食べてもらうまでに時間がかかっています」

「介助スタッフは二重、三重の防護服を着ていて、大汗をかくそうです。そんな過酷な現場で勤務してもらっています。それに施設内に缶詰めですから、ストレスによる健康被害を懸念しています。今のところ入所者の体調不良は聞いていませんが、職員がストレスで高熱を出しているようです」

感染不安が応援スタッフを集めにくくしている

治療法が確立されておらず、感染への不安が大きい新型コロナウイルスならではの困難もある。施設では感染対策を重ねているものの、家族から不安の声が上がるなどして、思うように応援スタッフを集められないのだ。クラスター発生直後には、法人や関係者に対し、いわれのない誹謗中傷もあった。

泉さん「北総育成園を助けたいと言ってくださる同業の方はたくさんいます。でも感染してはいけないと、それぞれの施設の管理者がストップかけている状況です。法人内で人手を出そうとする場合も、家族から『なんでそういうところに行くの』と言われてしまう。つまがり市議の募金呼びかけもあり、最近は応援の声の方が多いですが、一時期は法人への誹謗中傷がひどくて、電話を止めていました」

津曲市議「船橋市内で働くさざんか会のスタッフの子どもが「保育園に来ないでくれ」と言われたそうです。北総育成園があるのは、船橋市から50キロ以上も離れており、船橋市内のスタッフの皆さんが直接関わることはないのに。とても悲しいことです。東日本大震災で福島から避難されてきた方への差別がフラッシュバックされてしまいます」

地域の福祉を守るため、災害福祉支援チームの派遣を

クラスター発生から2週間以上が経った。地域全体の福祉を支えるためには、現場の努力だけでは足りない状況になっているという。

泉さん「行政はスタッフを法人内で確保してほしいと言いますが、法人の他の施設を閉めるわけにはいきません。高齢の親と暮らしている利用者が多く、通所があってなんとか維持できている家庭もあるんです。

東日本大震災時には、国の障がい者支援施設から職員が支援に出た前例があります。また千葉県は、福島の被災した障がい者施設の人たちを県内の公的な宿泊施設に迎えて、職員をそこに送って、一定期間交代で支援しました。今回、全国各地にある国立の施設職員に来ていただかないと、大変な状況です。DWAT(災害派遣福祉チーム:Disaster Welfare Assistance Team)のような対応をしてもらえないでしょうか。行政はこれまでのノウハウを活かして現場を救ってほしい」

津曲市議「市や県からは医療、物的な支援をいただき現場では頑張っていると思います。しかし現場で何が起きているか全体像を把握し、応援スタッフ派遣も含めた包括的な支援をしてくれるところというと心配になります。国には東日本大震災の時の知見があるはずですから、ぜひ支援に乗り出してほしい」

東日本大震災時の経験活かし、国からの人員支援を

泉さんと津曲市議の話を受け、枝野代表と道下衆院議員は、東日本大震災時の事例を活かした人的支援、全国からの応援が必要と話した。

枝野代表「最も必要なのは人的支援。国や県をどのように動かしていけるのか、できることを最大限やっていきます。東日本大震災の例もありますから、なおさら支援に乗り込むべきです。今回の教訓が次の災害で厳しい現場を支える蓄積になるはずです」

道下衆院議員「批判の電話やメールを受けて、職員の方々は大変な心痛だったと思います。応援したい人が全国にたくさんいると伝えたい。入所者さんは不安の中で過ごしていると思います。(距離的に)離れた中でできる、心のケアの提供方法も考えていきます」

政府はコロナウイルス対策として108兆円規模の補正予算案を閣議決定し、4月20日以降に国会での審議が進む見込みだが、日本全国の現場の苦境がそれによって打開されるかは不透明だ。

北総育成園の事例は、おそらく日本全国の様々な現場で、現在進行形で進んでいる問題の一端を示している。例えば津曲市議のもとには、「障がい者施設への支援が少ないのは当然」といった声も聞こえてくる。「感染への不安が差別意識や優生思想につながってしまってはいけない。いわゆる『生産性』で人間の存在価値そのものをはかってしまい、社会的に弱い立場に置かれた人々への攻撃につながることがないよう、カウンターのメッセージを発していくのも政治の役割ではないでしょうか」と津曲市議は話す。

政府の新型コロナウイルス対策は、生活の現場にある一つひとつの切実な声に基づいた、きめ細やかなニーズに対して積極的な手を打てていない。立憲民主党は今後も、枝野代表をはじめとする議員が様々な現場にオンラインでヒアリングし、集約した声をもとに、政府へと必要な施策を要求していく予定だ。


<追記>※この4月10日のヒアリングの後、道下衆院議員が他の国会議員や厚生労働省にはたらきかけ、この問題を広く知らせるためのヒアリングを4月17日に開いた。
https://cdp-japan.jp/news/20200417_2848

※4月10日、17日のヒアリング内容も受け、4月24日には党の障がい者・難病プロジェクトチームが、厚労省に要望書を手渡し、意見交換した。
https://cdp-japan.jp/news/20200424_2872

▼要望書はこちら

新型コロナウイルス対策要望書 障がい者・難病PT_ページ_1.jpg
新型コロナウイルス対策要望書 障がい者・難病PT_ページ_2.jpg
新型コロナウイルス対策要望書 障がい者・難病PT_ページ_3.jpg


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