2019年10月1日
新しい時代をつくる力は、いつだって国民の中にある——2019年夏 インタビュー
*この記事は、2019年7月参院選の特設サイトに掲載したものを転載しています。
#令和デモクラシー は「日本のパラダイムシフト」を実現すること
——「令和デモクラシー」という言葉に込めた想いを教えてください。
今の日本は、かつてない急激な人口減少と超高齢化の時代を迎えています。同時に、平成30年のあいだには、従来の日本には見られなかった多様な変化も生まれています。現在の日本には、大きなパラダイムシフト(価値観や社会のあり方の転換)が必要なんです。
でも、そうした時代の流れから一番取り残されているのが現在の政治。日本の近代を振り返れば、明治には議会の設置を求めた「自由民権運動」があったし、大正には普通選挙権を求めた「大正デモクラシー」があった。同じように、この時代にも、社会のあり方を根本から転換させるムーブメントが必要なんじゃないか。
僕らはこのパラダイムシフトを政治家だけではなく、国民のみなさんと一緒に実現したい。それが「令和デモクラシー」に込めた気持ちです。
ボトムアップ経済・多様性・参加民主主義——日本に必要な3つの転換
——日本が転換しなければならない分野はどこでしょうか?
日本には3つの転換が必要です。まずは「トリクルダウンからボトムアップ経済へ」、次に「画一性から多様性へ」、そして「おまかせ民主主義から参加民主主義へ」。
1つ目は、経済の転換。この20年くらい、一部の大企業をもうけさせれば、やがて国民全体が豊かになる、という「トリクルダウン」が言われてきました。が、結局うまくいかなかった。日本のGDPの6割は個人消費です。ここが冷え込んでいたら景気なんてよくなるはずがありません。
僕らは個人が豊かになることを通じて経済成長を作り出します。賃金を引き上げ、働く人たちの所得を底上げする。介護や保育、教育など、暮らしの安心を高める分野への投資を強化することで、安定した雇用を生み出すと同時に、老後世代の安心につなげ、個人消費を刺激する。それが「ボトムアップの経済政策」です。
2つ目は、画一性から多様性への転換。平成の日本では、女性の社会進出が進み、LGBTを始めとするセクシュアル・マイノリティの方々が声をあげるなど、価値観やライフスタイルの多様化が進みました。でも政治はその変化に追いついていない。
人口減少が進むこれからの日本に必要なのは、異なる立場を尊重し、その中から新しい価値を発見していく姿勢です。出自やジェンダー、性的指向・性自認、障がいの有無などによる不公正を許さず、多様性を力にする社会をつくる。たとえば、同性婚や選択的夫婦別姓の実現はその第一歩です。
3つ目は、おまかせ民主主義から参加民主主義への転換。これだけ国民のニーズが多様化した現在では、永田町に閉じこもって現場を知らない一部の政治家に政治を任せてしまう「おまかせ民主主義」は通用しません。
新しい時代をつくる政治のヒントは、様々な問題の当事者や、そうした社会問題の解決に取り組む現場のNPOやNGOの経験や知恵にあるはず。立憲主義を回復し、公文書管理や情報公開を徹底することも大切ですが、なにより一人ひとりの政治参加の機会を様々に確保する、参加民主主義への転換が必要です。
現在の政治に思うこと——立憲民主党の使命
——現在の政治についてはどう考えていますか?
僕は現在の政権は、国民の失望から生まれたと考えている。投票率はずっと低いままだし、「政治を変えられる」と考える人がどんどん減って、民主主義の空洞化が起きてしまっている。もちろんこの状況の責任は、国民のリアリティからかけ離れたことで離合集散にあけくれてきた、永田町政治にあると思っています。
けれど同時に、このままじゃダメだと感じている人も増えているはず。年金の安心は崩れ、給料は下がり続け、子育て世代への支援もまったく足りていない。沖縄で強行されている辺野古の埋め立ても象徴的です。現在の政治はむしろ国民の政治不信をより加速させてしまっている。「ここで政治の流れを変えなければ」という危機感はこれまで以上に広がっています。僕らはその人たちの期待を真剣に受け止めなければいけない。
立憲民主党の使命は、現在の政治に違和感を持つ人たちに、信頼に足りるビジョンを共有し、政治を変える「もう一つの選択肢」になること。立憲民主党は2017年、「まっとうな政治」を掲げて誕生しましたが、まだまだ小さな政党です。今回の選挙では「立憲ビジョン」という、新しい日本に必要な政治ビジョンをまとめています。ぜひ目を通して、共感できる内容であれば、身近な人と政治の話をするきっかけにしてほしい。
この夏の新人たちは「日本社会の多様化」を象徴している
——この夏、多くの新人が政治に挑戦しようとしています。りっけんの新人に感じることを教えてください。
今年の夏の立憲民主党の新人は、一言でいえば、「日本社会の多様化を象徴する顔ぶれ」だと思います(笑) 僕もびっくりするくらい、これまでなら立候補しなかったような方々が集まってくれています。LGBTの当事者の方もいるし、障がいの当事者の方もいる。数々の難しい裁判で活躍してきた弁護士の方、元アナウンサー、NPOの代表なども。予定候補者のうち、女性は4割を超えています。
一人ひとり個性的で、みんな従来の永田町にはいないタイプ。でも、それはこれまで日本の政治家があまりに画一的だったということです。彼女ら・彼らのストーリーは、きっと国民一人ひとりの現実とどこかでつながっているはずです。
平成最後の解散総選挙で誕生した立憲民主党に、こうした方々が集まってくれたのは、平成の変化を示す象徴的な出来事です。具体的な現場の声、生活の現実に根差した声が、政治に届きやすくなるきっかけになればいいと思っています。
このパラダイムシフトを実現する力は国民一人ひとりにある
——最後に有権者にメッセージをお願いします。
平成の30年間は富が一部に偏り、人々の生活を豊かにできていなかった。これまでの日本は、産業でいえば低価格を競う大量生産・大量消費型の社会モデルでした。これからは、もっと「個人」を大切にし、独創性やイノベーションを生み出していく、高付加価値型のモデルへと転換していく必要があります。日本がこの大きなパラダイムシフトに成功すれば、未来は明るいと思います。
令和デモクラシーが目指す3つの転換は、その日本全体のパラダイムシフトの下地づくりです。本当の意味でその転換を実現する力を持っているのは、最終的には国民一人ひとりです。このパラダイムシフトを進めることで、現在は失われつつある未来への希望を取り戻せればと思ってます。
枝野幸男 YUKIO EDANO
1964年生まれ。衆議院議員(9期、埼玉5区)。弁護士(第二東京弁護士会)。1993年に初当選し、日本新党の新人議員として薬害エイズの問題に関わる。その後、民主党時代には政調会長、幹事長、現行制度下で最年少での官房長官などを歴任した。2017年10月に「国民の声に背中を押されて」、たった一人で立憲民主党を結党。現在、立憲民主党代表。