読むりっけん

2020年5月19日

「もし第2波が来たら、対応できるか不安」──新型コロナウイルス対策最前線・保健所の課題

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PCR検査の窓口業務、陽性患者が出た場合の受け入れ先の手配、追跡調査、陽性患者の移送、検体の採取、帰国者の健康管理。新型コロナウイルス対策で、これら全ての業務を担っている保健所は、感染拡大防止の最前線に立つ公的機関だ。ただ感染拡大が進んだこの数カ月間、業務は非常にひっ迫していた。

その一因には、この数十年の「小さな政府」への動きの中で保健所数が大幅に削減されてきたことがある。1992年の852カ所から2019年の472カ所へ、45%減だ。

緊急事態宣言は一部解除されたものの、感染拡大の第二波への懸念が政府の専門家会議委員から表明されている。立憲民主党の枝野幸男代表と医師である阿部知子衆議院議員がオンラインで保健所の現場の声を聞く中で、保健所の体制にはなお課題が残ることがわかった。

※写真は上段が左から福井県の保健所関係者、全日本自治団体労働組合の衛生医療担当者、中段左が三重県の保健所関係者、枝野代表、下段が阿部衆院議員(都内の保健師の方は写っていません)

残業時間が月200時間超も。緊急時に対応できる制度設計を

保健師らは新型コロナウイルス感染症の対応に追われ、この数カ月間、休む間もなく働いてきた。1カ月以上休みを取れず、残業時間が月200時間を超える職員もいたという。通常業務の先送りや応援態勢の整備により現在は状況が落ち着いてきた。ただ、緊急事態宣言の一部解除を受け感染拡大の第二波が来る可能性や、終息しないまま秋冬を迎えインフルエンザの流行と新型コロナ感染症対策が重なる可能性もあり、保健所関係者らは「現在の体制で対応できるか不安」と口を揃える。

福井県の保健所関係者「中核市レベルでは(感染症対策)専門職の確保が難しいです。加えて、平時と緊急時では必要な人員が大きく異なることがわかりました。緊急時に対応できる制度・体制を構築しなければいけません。県全体での人材確保や民間医療機関との協力も必要だと考えます」

都内の保健師「感染症の知識を持つ保健師が絶対的に不足しています。応援職員への事前レクチャーも十分にできず、職員が強い不安を感じて業務継続が困難になる事例もありました。特に感染拡大初期は、自宅から医療機関への交通手段がない方を、やむを得ず公用車を使って移送することもあったので、精神的負担は大きかったと思います。感染症の流行といった特殊な状況下におけるリスクコミュニケーションや職員のメンタルケアについて、平時から取り組んでいかなければいけないと感じました」

緊急時に対応できる制度設計は、感染拡大が落ち着きを見せている今のうちに取り組むべき課題だ。また、ヒアリング参加者らは第二波を防ぐための検査の拡大も訴えた。

三重県の保健所関係者「クラスターは医療機関や高齢者福祉施設で発生する傾向があります。たとえば、高齢者福祉施設の管理者が必要と判断した場合、入所者やスタッフの検査を行える体制にできないでしょうか。別の病気で状態が悪化した方を病院へ移送する際、受け入れ先から『感染していないか』と心配され足止めを食うケースがあるので、検査できる体制を構築すべきだと考えています」

「現場の保健師よりも、住民の方が先に新しい情報を知っている」。情報伝達の合理化が急務

情報伝達が合理化できていないことも、保健所業務を圧迫する一因となっている。

都内の保健師「3、4月の段階では、朝入ってきた情報が夕方には変わっているということが多々ありました。かつ、国から都道府県への通達が遅く、ニュースで先に報道されて住民の方が新しい情報を知っているという状況となり、相談窓口で混乱が起きました。

新しい感染症なので、本来であれば日々変化する情報をリアルタイムで共有し、素早く対応することが必要です。しかし、実際は紙ベースで情報共有されていて時間がかかり、データベース化も進んでいません。国や都道府県が主導して合理化を図ってもらえると助かります」

現在、各保健所に寄せられる電話の中で「感染者の住所を公表しろ」といった苦情に近い内容も多く、対応にかなりの時間を取られているという。人々の不安を助長しないためにも、緊急事態宣言の一部解除により経済活動が再開する中で、個々人や企業が取るべき行動指針をわかりやすく示すことが急務だ。

新生児訪問指導、高齢者の健康増進。対面、密集できない中で、どうしたら普段の健康を守れるか

保健所が感染症対策に時間を取られる中、新生児訪問指導や高齢者の健康増進といった従来の業務が滞っていることも重要な課題だという。

都内の保健師「集いの場がなくなり、孤独を感じている高齢者は多くいます。緊急事態宣言が解除されても、ウイルスが無くなるわけではありません。感染リスクの中でいかに住民の健康を守っていくか、頭を切り替えて施策を考える必要があります」

電話などで子育て世帯へのアプローチを増やしている自治体もあるものの、すべての自治体で行われているわけではなく、自治体間の事例共有などもできていないのが現状という。阿部衆院議員は、「新生児を育てる親御さんや精神疾患を持つ患者さんにとって、保健師は重要な存在。個別対応が増えている状況に合わせ、人手を充実させる必要があります。人が人を支える分野を手厚くしていく政策を取らなければいけません」と受け止めた。

行き過ぎた「官から民へ」が感染症対策のネックに。いま、医療・福祉政策の転換を

感染症対策に詳しい保健師が足りない、多くの患者、電話相談に対応する人員が足りない──。ヒアリングでどの現場でも共通している人員不足は、「行き過ぎた『官から民へ』の動き」が背景にある。ヒアリングでは、今後コロナが落ち着いたら、公立・公的医療機関の重要性もいま一度見直してほしいとの声があった。

全日本自治団体労働組合の衛生医療担当「行き過ぎた『公から民へ』の業務の移譲が、コロナ感染拡大による保健所現場の混乱を招いていると思っています。特に1994年に保健所法が地域保健法に改正されてから、保健所はこの数十年間でかなり減らされました。1996年には800カ所以上ありましたが、2019年には472カ所まで減少しました。それに伴い、保健所機能が脆(ぜい)弱になっています。

医療崩壊が心配される中、政府は公立・公的病院の統廃合を進めていて、対象とされた440病院のうち、53病院は感染症指定医療機関です。今回の感染拡大を受け、公立・公的医療機関の重要性が明確になったと思います。今後、ぜひ見直しをお願いします」

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保健所の現場の声を聞き、枝野代表と阿部議員はそれぞれ、今国会でできること、中長期的にすべきことを示した。

阿部衆院議員「先ほど『医療や福祉など人が人を支える分野を手厚くする政策が必要だ』と話しましたが、政府は病床を削減した病院に補助金を出すなど真逆の政策を取ってきました。公立・公的病院の統廃合に関して、わたしは今年に入って4回国会で質問していますが、より力を入れていきます。コロナのような感染症リスクを前提として医療体制を見直さなければいけません。

病院は命の砦、保健所は地域の砦です。わたしも40年以上前になりますが、保健所で健康診断をしていました。医師として議員として、皆さんが安心して働ける環境を整え、医療・福祉政策の充実に取り組んでいきたいと思います」

枝野代表「これまで国会で『国として現場の情報を集約できていない』と訴えてきましたが、保健所の現場の皆さんは、国からの情報が降りてこないことに苦戦している。このギャップを痛感しました。情報共有体制を整備するよう繰り返し訴えていくとともに、整備された体制に不備がないか細かくチェックしていきます。

地方創生臨時交付金の不足は国会で再三訴えていますが、都道府県や市町村の財政がひっ迫し人員も不足する中で、十分な交付金がなければ感染症対策もままならなくなってしまうと改めて危機感を覚えました。2020年度第二次補正予算に反映させたいと思います。

要望の中で「行き過ぎた『官から民へ』の見直し」についてもお話がありました。ご指摘の通り、この間行政自らが公的医療機関の規模を縮小してきた経緯があります。しかし、保健所や十分な病床の確保こそ、今回の新型コロナウイルスのような事態が起きてしまったときの最後の砦です。この危機を乗り越えるためにも、ポストコロナを考える上でも、皆さんの意見をうかがいながら現状改善に向けて動いていきます」



枝野幸男 YUKIO EDANO(立憲民主党 代表)

ホームページ https://www.edano.gr.jp/
Twitter  @edanoyukio0531

阿部知子 TOMOKO ABE(立憲民主党 衆議院議員)
ホームページ http://www.abetomoko.jp/
Twitter @abe_tomoko

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