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2020年6月19日

現場の「頑張り」には限界がある。「第2波」に高齢者介護の現場はどう備えるか

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日本では新型コロナウイルスのクラスターの半分が、医療施設と介護施設で発生している。重症化しやすい高齢者が集まり、さらに食事や入浴介助など、人と人との密接が避けられないためだ。

全国で相次いで発生した介護施設でのクラスターにより、地域で十分な介護サービスを提供できない事態となった。緊急事態宣言は5月25日に解除されたが、これからも常に感染リスクはある。感染の第2波への懸念もある中、地域の介護を維持するための対策は、待ったなしだ。

所管の厚生労働省の通知が現実に合っていない、自治体によって対応に差がある、そもそも人手も防護具も足りていない…。新型コロナウイルスの感染が拡大したこの数カ月間、あるべき支援が介護事業者に届かず、現場の頑張りでなんとか地域の介護が維持できている状態だった。政治が介護職の低賃金や人手不足を放置してきたツケが、いま回ってきている。5月25日、枝野代表と尾辻かな子衆院議員は、首都圏で高齢者介護に携わる方たちからオンラインでヒアリング。政治に課された山積みの課題を、現場の方々から聞き取った。

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上段左から順に東京都内の居宅ケアマネジャーBさん、司会を務めたひわき岳杉並区議、介護老人保健施設の事務長代理・塩原さん、中段左から千葉県内の訪問介護事業者連絡会会長・林さん、尾辻衆院議員、枝野代表、下段左が千葉県内通所介護(デイサービス)職員のAさん、右が東京都内の居宅ケアマネジャーCさん

新型コロナの感染リスクは、地域の「介護力」を弱め続けている

新型コロナウイルス感染拡大は3カ月ほどの間に、介護事業者の経営体力を大きく削いだ。このまま行政からの支援がなく倒産などが増えれば、地域の高齢者介護を支えるインフラがなくなってしまうおそれもある。千葉県内通所介護(デイサービス)職員のAさんは、通所介護の経営危機に警鐘を鳴らす。

新型コロナウイルスの影響で、1日型(※1)では8、9割の稼働率ですが、さらに大きく影響受けているのは半日型。稼働率が5、6割まで低下しています。半日型はもともと軽度の方が利用しており、自身の判断で利用を控える人がかなり増えたからです。ただ、そのために運動機能が低下して、ご自宅での転倒が増えています。

利用を控えている高齢者に電話で安否確認をすることで、介護報酬が特例的に出ることになりました。でも、お金は払いたくないけど電話はしてほしいという利用者も多くいて、事業者側はもうボランティアで電話しているという、かなり厳しい状況です。電話での安否確認の利用者負担免除を自治体や国に提言はしているのですが、なかなか良い返事がもらえません。

前回の介護報酬改定により半日型は、8割から9割稼働しないと利益が出ない構造になってしまっていましたから、少なくともわたしの周囲では、コロナの影響でほぼ全事業所が赤字経営です。今後、倒産も増えてくると思います。

※1)通所介護サービスは1時間ごとの提供サービス区分となっているが、比較的軽度の方の利用が多い半日型と、比較的介護の必要性が高い方に食事や風呂、レクリエーションなどを提供する1日型とおおまかに2種類に分類されている。

千葉県内の訪問介護事業者連絡会会長・林さんのところには、陽性患者が出て閉鎖した通所施設の利用者向けに、最低限の訪問介護サービスを提供できるかと自治体から打診があったという。どこの事業所も慢性的な人手不足の中、今後もし第2波が来た場合に地域の介護を支えていくのは、難しいと感じている。

施設で生活できなくなった方々へのサービス提供自体はさせていただきたいのですが、もともと訪問介護事業所のヘルパー数は非常に少なくなっていて、通常時でさえサービス提供を断らざるを得ないこともあります。そこへいきなり、新しいケースの依頼がかかっても、果たして応えられるかどうか。非常に難しいです。

医療と介護の連携「行き当たりばったり」を乗り越えるには?

全国で相次いで発生した介護施設のクラスター。高齢者は重症化しやすいため、軽症でも陽性なら入院が原則だが、病床がひっ迫していて足りない、要介護の人を十分にケアできないなどといった理由から、病院に受け入れてもらえず、介護施設内に陽性患者がとどまる事例も散見された。

自治体が中心となって、地域の病院から介護施設へ医師や看護師を派遣したり、法人の垣根を越えて応援の介護職員を募集したりする事例もある。ただ、その対応は自治体によってまちまちだ。介護現場で働く人たちは、いざ陽性患者が出た場合の対応が不明確なことに不安を抱えている。

介護老人保健施設の事務長代理・塩原さん(社会福祉士・ケアマネジャー):陽性患者が出たときに、本当に病院が受け入れてくれるのか、一番の心配です。その逆に、コロナが治った要介護の退院者を介護施設側が受け入れるのを拒否し、病院側も退院させられず困ってしまった事例もあると聞きます。退院できる人が介護施設に移れば、病床をあけられる。これから長期間、コロナ感染の可能性を常に考えながら仕事をしないといけない中で、それがわたしたち介護施設の役割であり、行政がつくるべき仕組みだと思います。

今回、感染症に対する知識、いざ陽性患者が出たときのゾーニング、衛生用品の着脱の仕方ひとつとっても、やっぱり介護職と看護師では知識が圧倒的に違うなと感じました。基準上、看護師がいなくてもいい施設で陽性患者が出たら、例えば保健所など行政からの応援や指導が来るなどの体制が必要です。

千葉県内通所介護職員のAさん:感染者や濃厚接触者が出たときに、わたしたちの自治体では行き当たりばったりの対応になってしまって、なかなか病院へ利用者の受け入れが進みませんでした。事前に第2波、第3波に備えて準備をしなければなりません。

「介護職は、感染症対策の専門家ではない」。研修もままならない現状を変えてほしい

日々感染リスクがある三密状態で仕事をするにあたって、「自分が高齢者に、家族にうつしてしまうかも」「だれかからうつされてしまうかも」と介護職の心配は絶えない。それなのに、これまで介護現場では「危険手当」を事業者の持ち出しで従事者に払っていた。2020年度第2次補正予算案には、医療、介護、障害の現場で働く人たちへの慰労金がようやく盛り込まれ、立憲民主党はじめ野党はさらなる拡大を求めている。

ただ、もしクラスターが発生したときに介護職が陽性患者と接することが出来るかというと、そうはいかない。東京都内で居宅ケアマネジャーをしているBさんは、介護職は「決して感染症のプロではない」と強調する。

危険手当を出すのは大事だと思いますが、だからと言って感染症のプロではない介護職が医療従事者のように陽性患者に接してくれというのは大きな問題です。そこの論点が、緊急事態だからということですっ飛ばされているんじゃないかと思っています。このままではまた、少ない知識と装備で介護職が陽性患者に対応することになってしまうのではないか、と心配しています。

千葉県内の訪問介護事業者連絡会会長・林さんは従業員向けの感染症対策講習を保健所から受けたが、「付け焼刃」の不安が残る。

保健所自体が忙しい中で、1回防護服の着脱訓練をしていただいただけでも、良しとせざるを得ないのかもしれない。ですが、たった1回訓練を受けただけで陽性患者対応をしてほしいとは、とても言えないです。もう少し充実する機会を、国がなんらかの形で作ってほしいです。

「防護具もない、補償もない、感染したら差別されるかもしれない」。現場の頑張りはもう限界

日々の防護具調達にしてもクラスター対策にしても、現状ではまだ現場の努力に任せられているうえに、事業所への減収補償や従事者の安全確保は十分ではない。東京都内で居宅ケアマネジャーをしているCさんは、「新しくこの介護業界に入ってきてくださる方が激減するんじゃないかと、とても心配」と力をこめる。

マスクも手袋も消毒液も、物品の購入補助をどんどん課題にあげていただきたいです。介護施設は儲けが多く出るわけではありませんから、いま割高になっている防護具を自力で調達するのは負担です。ヘルパー自身が高齢化している中で、何の防護もなく現場に行くリスクを背負えるヘルパーはいません。もう70歳だし感染したら死んでしまう、だから介護職やめろ、と夫に言われた同僚もいます。

そういう第一線で働いてくれている人たちに、少ない防護具で現場に行けというのはナンセンスです。防護具もない、補償もない、もし感染したら差別されるかもしれない。優先的にPCR検査ができるとか、防護具は国をあげて用意して完全な装備で現場に臨めるといった保証がなければ、若い人たちはこの業界に来ないと思います。

若者が来たい、と思える介護現場に

介護分野での人手不足は、これまでも再三問題になってきたが、クラスターが発生したところでは、改めて人手不足が深刻な現場は感染症にも弱いことが突き付けられた。これまでの「現場任せ」の政治から抜け出すためには、国の積極的な介入と、情報周知の徹底が欠かせない。

尾辻衆院議員:北海道札幌市の介護施設で発生したクラスターでは、約90人が感染し、うち16人が亡くなりました。看護師が感染、退職でいなくなる時があり、食事は1日2食、入浴は2週間に1回なんて状況になってしまった。そんなときでも、結局その法人や施設、自治体でどうにかしてください、国は調整と財政支援はしますというのが、今の厚労省の姿勢です。介護施設側は感染症の専門家ではないので誰も対応のノウハウを持っていないのだから、国が専門家を参加させないとどうにもならない、と強く言っていきます。

また皆さんから共通して要望のあった、介護事業所の減収をどうしていくのか。わたしたちも2次補正予算の審議にあたって、減収補償をきちんとすべきと要望(※2)を出しました。これを実行に移すことが、今とても大事だと感じました。

枝野代表:実は5月上旬の国の基本的対処方針で、医療機関や介護施設についてはクラスターを生み出す可能性のある場合には、PCR検査をすると決まっていますが、それがおそらく現場に下りていません。この分野だけではなくいろいろなところで、国がこれをやるべき、と言っても全然現場に下りていない。それがものすごい矛盾を生んでしまっています。情報をきちんと周知するよう、さらにプッシュします。

中長期的にはますます介護のニーズが増えていく中で、介護の仕事に自信を持って、若い人たちも希望を持って入ってこられる環境をつくっていかないといけない。それが今、逆方向に向かってしまっています。今回、介護の現場が非常に厳しい、と一定程度認識されるようになったと思います。介護職員などの処遇を改善する、大きく変えていくきっかけにしていきます。

▼(※2)5月19日に共同会派厚生労働部会が政府に提出した「介護・障害福祉サービスの崩壊を防ぐための新型コロナウイルス対策としての第2次補正予算に関する要望」

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