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2019年10月1日

多様性を力に変える社会へ—— 2人のLGBT当事者がめざす政治 増原ひろこ・石川大我

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*この記事は、2019年7月参院選の特設サイトに掲載したものを転載しています。

“いないことにされている” LGBT当事者が感じた孤立と社会への違和感

司会:Bazaar Cafe松浦千恵)お二人はLGBTの当事者としていろいろな活動をされてきました。どんな思いでその活動を始めたのかと、その内容を教えてください。

増原)わたしが女の子を好きだと気づいたのは10歳の時。でも周りのみんなは「男の子が好き」と言っていて、自分の気持ちを言えず、時には自分自身を強く否定してしまっていました。そういう意味で思春期は、すごく辛い時期だった。LGBTがいないことにされている社会はおかしい、と当事者として発信を始めたのは30代に入ってからです。

ダイバーシティ経営のコンサルタントとして、どんな人も安心して働ける職場環境をつくるための研修やコンサルティングをしてきました。それから性の多様性の観点も入れながら、不登校や健康被害にもつながっている理不尽な校則を社会の課題として見直していくプロジェクトを、仲間と一緒に立ち上げました。

石川)僕は小学校高学年くらいに、男の子と一緒にいるとなんとなく幸せだなという気持ちがあって、これが同性愛だと気づいたのは中学2、3年生くらい。周りに当事者はいなくて、同性愛を揶揄するような風潮もありました。親や兄弟にも言えず、25歳まで孤立していました。

その後インターネットを通じて、自分と同じ当事者がいると知ったんです。それで、自分がおかしいんじゃなくて、LGBTを受け入れない社会に問題があると思いました。そこから孤立している当事者をつなげるためのNPOを作り、一緒にこの社会を変えようよといった活動をしてきました。

2011年には東京都豊島区議会議員に当選し、自治体レベルでのパートナーシップ制度をつくるために議会で質問しました。なかなか進みませんでしたが、当事者の方や支援者が連携して働きかけることで、今年2019年4月に制度ができました。

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パートナーシップ制度で流れが変わった——草の根活動が成立を後押し

松浦)LGBTの当事者がぶつかる社会の壁についてはどう感じてこられましたか?

増原)今の日本社会では、性の多様性があること自体が否定されることがまだまだたくさんあります。例えば同性が好きとか、性別を変えたいということに対して「気持ち悪い」「死ね」という言葉が日常の中で投げつけられる。親から「認めない」「帰ってくるな」と否定されて、ずたずたに傷つくこともありますよね。

大きな課題として、セクシュアリティのアウティング(暴露)があります。わたしの友人も、信頼できると思って上司にカミングアウトしたら、翌朝職場のチーム30人全員に広まっていて、こそこそ噂話をされる。被害に遭ったにもかかわらず、本人が辞めざるをえなくなった。そういうことが、全国で日常的に起こっています。

石川)LGBT当事者は、一人ひとりが本当に孤立してします。今でも、自分以外の当事者に出会ったことがないという人たちから手紙やメールをもらいます。

松浦)最近は多様性がメディアでも取り上げられるようになりましたが、それを後押しする法律はまだ整っていません。いま求められているのはどのような政治でしょうか?

増原)まず前提として、市民の暮らしと政治に距離がありすぎると感じています。国会では、100人いたら86人が男性で、女性は14人だけ。日本の人口の半分は女性なのに、それって不自然ですよね。パリテ(男女同数)をはじめとして、マイノリティの声が届く政治にしていく必要があると思います。

石川)僕は20年ほど前から講演活動をしてきましたが、親に孫の顔を見せることができないから親不孝だとか、人権を認めるとこの国が滅ぶとか、当時は誤解と偏見をぶつけられることが多かった。けれど2015年に東京都渋谷区と世田谷区でパートナーシップ制度ができて、流れは大きく変わっています。パートナーシップ制度はいま全国で22の自治体に広がっていますが、これは地域のLGBT当事者が声を上げたことの成果です。

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当事者の生きづらさを解消することで、 周りも幸せになる

松浦)具体的にはどんな法整備をしていきたいと思っていますか?

増原)まずはLGBT差別解消法をつくること。あとは、人生の選択肢をもっと広げていくために選択的夫婦別姓の実現や、手話言語法なども重要です。性暴力被害が深刻な中、性暴力被害者の支援法はいますぐ必要です。それから、いろんな事情で学校に行けない子どもたちのために、学校以外の選択肢も増やしていこうよという教育機会確保法を、より実効的にしていきたいとも思っています。

石川)婚姻平等法をしっかり作っていきたいです。G7(主要国首脳会議)の中で、同性同士のパートナーシップに法的な保障を与えていないのは日本だけ。自治体のパートナーシップの制度では補えない相続の問題も含め、しっかりと手当ができる婚姻平等法、つまり民法改正を実現したいです。

札幌出身のゲイの友達が帰省した時、お母さんにカミングアウトをしました。残念ながらお母さんは「そんな話は聞きたくない、自分はまともな子を産んだんだ」と言って心を閉ざしてしまった。でも数年経って札幌でパートナーシップ制度ができたら、お母さんから彼のもとに電話がありました。「あなたたちのための制度ができたんだよ、おめでとう」と。

パートナーシップ制度は、LGBTの当事者を幸せにするのはもちろんですが、その周りにいる人たちの誤解や偏見も解いて、幸せにするものなんです。地域で当事者が受け入れられることによって、都会に出てきた当事者が「やっぱり自分の生まれた街に帰ろう」となれば、地域の活性化にもつながりますよね。

松浦)以前から必要だと言われていても法律はなかなか実現しない。どうしてですか?

増原)議員立法で法律をつくるのってすごく時間がかかるし、与野党超えたコンセンサスが必要。与党が賛成してくれないと立法できないんです。だからこそ、政権を変える必要があると思います。

女性やマイノリティの生きづらさを解消するために必要な法律はたくさんある。でも、法律がなかなかできないねって言っている間に、亡くなってしまう命がたくさんあるんです。わたしも石川さんも仲間たちを、自殺で亡くしています。マイノリティの声を届ける政治を、1日でも早く実現したいという切実な思いがあります。

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「ふつう」からはみ出る多様性こそが、 社会の豊かさになる

松浦)多様性を尊重することは、社会にとってなぜ必要なんでしょうか?

増原)1億2000万人の人がいたら、一人ひとりがまったく違う存在。その違いがそのまま受け入れられる社会だと安心して学び、働ける。その人の自分らしさを活かせるので、潜在的な力をより発揮できるようになりますよね。

石川)昔から、社会には多様な人たちが暮らしていたと思うんです。でも今はそこに「ふつう」という枠組みをつくって、はみ出る部分を排除して、みんなが生きづらさを抱えながら暮らしている。これからは、みんながその違いを受け入れて、生きやすい社会をつくっていくことが必要だと思います。「ふつう」からはみ出た部分をみんなが持ち寄ることによって、この社会が多様で鮮やかな、まさにレインボーの社会になっていくんじゃないかなと。

増原)セクシュアリティに関することだけではありません。例えば、亡くなる前には多くの人が寝たきりになったり車椅子を使ったりすることを考えれば、身体障がいの方、車椅子の方が生きやすいようにユニバーサル化を進めていくことは、だれもが生きやすい社会につながる。そういう一つ一つの流れがつながっていくことで、日本社会がじわじわと真の意味で豊かになっていくのかなと思います。

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増原ひろこ HIROKO MASUHARA

1977年、神奈川県横浜市生まれ。慶應大学文学部、同大学大学院修士課程修了。LGBT当事者であることをオープンにして活動してきた。2015年、東京都渋谷区パートナーシップ証明書交付第1号(2017年末にパートナーシップ解消)。経営コンサルタントとして、NTTドコモ、みずほフィナンシャルグループなどの企業や、連合中央女性集会などでもダイバーシティ推進支援等を数多く展開。著書は「同性婚のリアル」(ポプラ社)、「ダイバーシティ経営とLGBT対応」(SBクリエイティブ)など5冊。

石川大我 TAIGA ISHIKAWA

1974年、東京都豊島区生まれ。明治学院大学法学部卒、早稲田大学大学院政治学研究科修了。2005年、LGBTの若者支援のためのNPO法人ピアフレンズを設立。代表理事を務める。参議院議員秘書を経て、2011年に東京都豊島区議会議員に初当選。日本で初めて公職に選出されたオープンリーゲイの議員として知られる。著書は「ボクの彼氏はどこにいる?」(講談社)、「好きの?がわかる本」(太郎次郎エディタス)など。

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